1金融機関につき150万円では足りないという場合は、家庭裁判所へ全相続財産について遺産分割の審判または調停の申し立てをすることにより、仮払いが認められる。こちらは、他の相続人に利害のない範囲なら、金額に上限はない。その代わり、家庭裁判所の判断が必要となり、時間がかかる。

 遺産分割が整えば、口座凍結は解除できる。まずは、金融機関の窓口に申し出るか、電話で連絡後、手続きとなる。必要書類は金融機関によって異なるが、概ね下記のものとなる。

◎口座名義人(故人)の通帳・キャッシュカード・証書など
◎口座名義人(故人)の戸籍謄本(通常、出生時から死亡時まで)、または法務局発行の「法定相続情報一覧図の写し」(登記官の認証文言付きの書類原本 ※参考:法務局『法定相続情報証明制度の具体的な手続について』
◎相続人全員の戸籍謄本(口座名義人の戸籍謄本で相続人を確認できない場合)
◎遺産分割協議書、または遺言書(自筆証書遺言や公正証書遺言以外の場合は家庭裁判所の検認を確認できる資料・遺言執行者が裁判所に選任されている場合は遺言執行者選任審判書も必要)
◎相続人の実印・取引印
◎相続人の印鑑証明書(通常、発行日より6カ月以内のもの)
◎その他、金融機関所定の書類

自ら備えておく
コロナ禍での「口座凍結」対策

 では、いざという時のために、自ら口座凍結に備えておく対策はあるか。相続なんてまだまだと考える20~30代のビジネスパーソンもあろうが、コロナ禍による生命の危機はもはや高齢者に限られない。また、いつ何時、自身が相続人にならないとも限らない。対策は打てるなら打っておいたほうが良い。

◎対策例1:「代理人カード」を作成する

 銀行の普通預金口座なら、口座名義人のキャッシュカード以外に「代理人カード」を作ることができる。夫婦や親子で生活費を共有している場合、離れて住む家族へ定期的に仕送りする場合にも便利だ。

 家族の名前で口座を作り、入金すると、「名義預金」とみなされ、贈与税や相続税が課税される場合がある。また、相続発生後、税務調査の対象となりやすい(参考:税務調査に関する当税理士事務所の相続コラム)。むしろ、「代理人カード」の作成をおすすめしたい。

 ただし、「代理人カード」は口座名義人本人が作成手続きする必要がある。手続きには、口座名義人と代理人各々の本人確認書類(運転免許証、各種健康保険証、パスポートなど)の提出、発行手数料を要する。口座名義人が亡くなった際には口座凍結されるが、その前にキャッシュカードを預かったり、暗証番号を聞いたりする必要がないという点で有用だ。

 また、口座名義人が認知症と認定された時も口座凍結が行われるが、その場合は「代理人指名手続き」をしておいたほうが良い。こちらも口座名義人に判断能力があるうちに手続きしておく必要があるが、介護施設への入所費用など、まとまった現金が必要な時に役立つ。