文化が変われば、組織は強くなる

ラグビー日本代表初のベスト8入りを裏側で支えた「組織文化」の変革撮影:竹井俊晴

 私は早稲田大学ラグビー蹴球部の監督を経て、現在は公益財団法人日本ラグビーフットボール協会の理事を務めています。協会で長く携わってきたのは、選手ではなく指導者の育成です。コーチのコーチとして、指導者を多く育ててきました。

 海外でのライセンス取得を機に世界中でさまざまなネットワークを構築し、現場での指導者育成の実践を通して培った知見を、最近では野球やバレーボール、陸上といったほかのスポーツにも生かしています。

 同時に、企業で働くビジネスパーソンのリーダー育成も実践しています。チームボックスというコンサルティング会社を経営し、日本を代表する大企業から成長著しいベンチャー企業まで、幅広い産業で働くリーダーの成長を支援しています。

 この過程で実感したのは、組織そのものを変えるには、リーダーだけに変革を促しても限界があるという事実でした。

 私は過去二十数年にわたって、組織を構成するフォロワーシップの重要性を提唱してきました。リーダーを育て、フォロワーシップを育んでいく。その過程で組織に属するすべての人が変わろうとしたとき、組織文化が大きく変容を遂げることを発見しました。

 目を見張るような変革の姿を、私はビジネスの世界でもスポーツの世界でも目の当たりにしてきました。

 どんな弱小チームでも、業績不振にあえぐ企業でも、強い組織に変わることができる。これまでの経験から私はそう確信しています。

 繰り返しますが、組織の根底にある文化が変われば、組織は強く生まれ変わります。

 そして組織文化を変えるには、組織に属する一人ひとりが意識や行動を変える必要があるのです。一人ひとりの意識や行動に変革を促し、組織文化を変え、より強く、貪欲に勝利を求めるウィニングカルチャーを生みだす手法を、『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』でお伝えしていきます。

 ただ、ひと言で「組織文化の変革」といっても、なかなか理解しづらいかもしれません。そこで次回からからは冒頭の話に戻り、日本ラグビー界がいかに“負け犬根性”から脱却し、勝利へ猛進する強いチームに変わったのかという実際の物語をご紹介しましょう。
(次回記事は2021年2月21日公開予定、本記事は、『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』の「はじめに」を再構成しました)