『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』では、「組織文化」をテーマの中心に据えています。この「組織文化」という言葉に含まれる「文化」という単語。今回はこの言葉をより深く理解するために、「文明」と「文化」の対比軸で考えてみましょう。

撮影:竹井俊晴

「文明」と「文化」の違いは何ですかーー。

 あなたは、この違いを明確に説明できますか。

 実は私自身、この2つの言葉の違いについて、あまり考えたことがありませんでした。考えるきっかけを与えてくれたのは、私が心から尊敬する一橋大学大学院国際企業戦略研究科の楠木建教授です。

 既に本連載でも3回にわたって紹介した通り、新刊『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』の中で私は楠木先生に取材をしています(詳細はこちら「楠木建教授が解説!「組織文化とは組織や集団の持つ好き・嫌い」」「楠木建教授が分析「組織文化は意思決定のスピードを高める」」「楠木建教授が伝授!「“秘孔”を突けば組織文化はガラリと変わる」」)。

 この取材の中で楠木先生は「文明と文化はそもそも根本的に違うものだ」と話をしてくれました。

 文明とは、一つの方向性に向かって進んでいくもので、後戻りはしません。テクノロジーの進化や人類の成熟の過程などは文明ですから、国や地域、人種などに関係なく、ある程度は同じ方向に向かって進みます。

 分かりやすい例が、時間に対する考え方です。文明が進化すると、どの国や地域でもみんな時間を意識するようになり、多くの人が時計を見て動くようになります。一方、文明が進化していないところでは時間や数の概念もざっくりしています。文明は比較的、可視化されやすく、一つの方向性に向かってどんどん発展していくものです。

 対して文化は、多種多様に広がるものです。楠木先生の言葉を借りると「文化は究極的には好き・嫌い」です。つまり組織文化とは、その集団がそれぞれ独自に考えている好き・嫌いが詰まったもの、と言えます。

 それを踏まえた上で大きなビジネスの流れを見ると、これまでは多くの企業が文明の進化を遂げてきました。文明という軸の中で、テクノロジーや売上高、シェアや仕組みなどで競い合い、その競争は年々激しくなっていました。

 しかし、こうした文明軸の競争は曲がり角にさしかかっているようにも感じます。文明軸で競争することだけがビジネスの未来ではない、という考え方が少しずつ広がっているのです。

 著述家の山口周さんは、長らく続いた経済成長がゆるやかにその成長率を低下させている状況を「高原社会」と読んでいます。また占星術の世界では、物質的な豊かさや生産性を重視する「地の時代」から、体験やネットワークなど、目には見えない豊かさが大切になる「風の時代」に変わったと言われています。

 きっとこれからは、文明軸の競争だけを続けるのではなく、それぞれの企業が独自に育んできた「組織文化」を大切にし、そこで違いを打ちだすケースが増えるはずです。

 売上高が毎年伸びるわけでも、圧倒的な利益を稼ぐわけでもない。しかし、そこにしかないユニークな組織文化を求めて、顧客や従業員、取引先、株主といったステークホルダーが集まってくる。組織文化こそが唯一無二のオリジナリティとなり、企業を輝かせる時代になっていくのでしょう。

 現段階では、組織文化で際立つ企業はそんなに多くはありません。しかしこれからは急速に、文明軸から文化軸へと、競争のフィールドを変える企業が増えるはずです。

 あなたの組織は文明軸ですか、文化軸ですか。ぜひ振り返ってみてください。

「組織文化こそ唯一無二の競争力になる」という理由については、『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』でも紙幅を割いて丁寧に説明しています。ぜひ、このテーマについてコミュニティ「ウィニングカルチャーラボ」で議論を重ねられるとうれしいです。

(本記事は、音声メディア「Voicy」の私のチャンネル「成長に繋がる問いかけコーチング」で2021年2月11日に配信した「文明と文化の違いは?」を記事化しました)