「私の感覚では、日本ブランドが中韓ブランドよりもマーケティングがそこまで弱いという認識はありません。それよりも問題は、製品企画力。現在の中国の消費者が何を求めて、どんなことに関心があるのかということを汲み取って市場に製品を送り出す力が、追いついていないのではないかと危惧しています」

 李さんがそのような不安を口にするのは、中国市場の中でも特に大きな影響を持つ「Z世代」の消費動向を正しく掴んでいない日本ブランドが、あまりにも多いからだという。

 Z世代とは、1995年から2009年の間に生まれたソーシャルネイティブ世代で、中国ではなんと日本の全人口の2倍弱となる約2億6000万人もいる。

日本企業が気づいていない
中国「Z世代」の本当のニーズ

 そんなZ世代の市場への影響力を象徴するのが、化粧品市場だ。Z世代の消費は全体の45%を占め、消費増加率も347%に達しているというデータもあり、「Z世代を制する者が世界を制する」という言葉もあるほどなのだ。

「中国市場に進出する日本企業とお話をしていると、残念ながらこのZ世代を正しく理解しようという方たちが少ない。たとえば化粧品でいえば、Z世代が今どのような美容成分や効果を求めているのかということさえ、ご存じない企業もあるのです。そういう市場に応じた製品企画力を磨いていかないことには、どんなにSNSマーケティングを駆使しても、日本ブランドの魅力は伝わらないのではないでしょうか」(李さん)

 そんな問題意識から李さんは昨年、上海に「中国人女性口コミ研究所」を設立した。Z世代をはじめとした中国の消費者が何を求め、どのような消費行動をしているのかということを分析し、中国市場を目指す日本企業に提供、商品開発などに活用してもらいたいという思いからだ。

 実際、この研究所で分析されるZ世代の消費動向を聞いてみると、日本の消費者の感覚とはかなりかけ離れていることに驚かされる。

 わかりやすいのが「顔値経済」だ。ご存じの方も多いだろうが、これは中国で数年前から見られる、外見の価値を高めるための消費を意味する経済トレンドなのだが、同研究所によれば、Z世代の場合はそれが「化粧品」にも見られるというのだ。