「製品戦略」6割、「アンバサダーマーケティング戦略」3割、
「空間戦略」1割

 以上が、ブルーオーシャン市場の拡張(客層拡大)戦略で実際にやったことだ。

 全体の6割が製品戦略だ。「高機能・低価格製品」という強みを活かし、ダントツ製品を開発するのが大きな基軸となる。2014年からPB製品に本腰を入れた。

 しかし、売上は3~4%しか伸びなかった。

 よい製品を隠し持っていても気づかれない。ワークマンは作業服の店なので一般客は入りにくいし、そもそも一般客に販売しようという発想自体なかった。

 そこに風穴を開けたのが異常値の検知である。

 よくわからないが売れている製品について、誰が、どのように使っているかを調べた。

 それがアンバサダーマーケティングにつながっていく。

 自社のポジショニングマップを見直し、ワークマンプラスの出店を決めてからは、店舗の空間戦略(雰囲気、デザイン、レイアウト、見せ方など)が重要になった。空間戦略が3割だ。

 現在ではワークマンプラスの成功で空間戦略はほぼ解決し、アンバサダーマーケティング戦略の比率が高くなっている。

 出店前は空間戦略3割、アンバサダーマーケティング戦略1割と考えていたが、現在はアンバサダーマーケティング戦略3割、空間戦略1割と逆転している。

土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。本書が初の著書。