10万部を突破したベストセラー『リーダーの仮面』の著者・安藤広大氏と、発売直後に大重版がかかり話題を集めている『超★営業思考』の著者・金沢景敏氏が、「『圧倒的な結果』を生み出す思考法」をテーマに語り合う対談の最終回。安藤氏、金沢氏ともに、「圧倒的な結果を生み出すためには、組織内の競争が必要だ」と考えているという。しかし「競争ばかりではギスギスしないか」とは、誰もが心配するところ。「競争心」を健全なエネルギーに変えるには何が必要なのだろうか(構成:ライター 前田浩弥)。

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「管理職」が本当に手をかけるべき部分はどこか

金沢景敏氏(以下、金沢) 1996年に開催されたアトランタオリンピック。女子マラソンでは有森裕子さんが銅メダルを獲得しました。競技後に行われたインタビューでの「初めて自分で自分を褒めたいと思います」という言葉は反響を呼び、その年の流行語にもなりました。でも実は、この言葉、重要な前段があるんですよ。

 4年に一度のオリンピックの晴れ舞台ですから、スタート時刻は何年も前に決まっています。有森さんは、その時刻に向け、4年間、誰よりも練習をしてきた。あとはそれを出し切るだけ。その境地に達し、かつ本当に出し切れたからこそ「初めて自分で自分を褒めたい」という言葉が出てきたんです。

安藤広大氏(以下、安藤) なるほど、深いですね。スポーツでも仕事でも、なんでも圧倒的な結果を出す人は、みんなそういう心境にあるんでしょうね。

 ただ、第2回で話に出た野村忠宏さんや長島☆自演乙☆雄一郎さん、そして有森裕子さんのような「やれる限りのことをやった。あとは出し切るだけ」のような境地に達するのは、個人の力だけではやはり難しいと思うんです。本当に一握りの人間にしかできない。

 だからこそ、管理職が必要なんだと思います。管理職は、メンバーが「やれる限りのことをやった」と心の底から思えて、確信をもって仕事に邁進できるような環境をつくってあげないといけない。その環境を整えてあげることが「管理」だと、僕は考えています。

安藤広大(あんどう・こうだい
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2020年10月現在、約1900社の導入実績がある。主な著書に『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)などがある。

金沢「管理」という言葉には、どことなくネガティブなイメージが漂いますけど、個を成長させるための「管理」であれば、実は個にとっては大歓迎な話なんですよね。

安藤 いや、もちろん、他者からの「管理」を必要としない、一握りの人材はいるんですよ。金沢さんもその一人だと思います。『超★営業思考』にも書かれているとおり、金沢さんは、営業マンとして自分で自分を追い込んで、やれる限りのことをやり尽くしましたよね? だからこそ、あれだけの「結果」を出したわけです。

 だけど、そういうレアケースを見た管理職が、メンバーみんなに「彼らのようになれ」と求めるのは間違い。そんなの不可能ですからね。むしろ、メンバーみんなが「彼ら」のように、コツコツと努力を積み上げられるようにする環境を整えることが管理職の仕事なんです。

金沢 実は今年の5月から、事業の一環として保険の代理店も立ち上げるんですが、その組織をつくるにあたって、ぼくはプルデンシャルでもトップ3に入っている優秀なマネージャーにジョインしてもらうことにしたんです。

 その代理店に参加する営業メンバーに、かつての僕のような働き方を強いるのは無理。僕自身、今から「あのときと同じ働き方をしろ」と言われたら、正直なところ、できる自信がありません。

 でも、「結果を出す営業法」をある程度、仕組み立てて、再現性を持たせることはできるはずなんです。そこで、僕よりも仕組みづくりに長けている優秀なマネージャーを呼んで、僕のビジョンにのっとって彼に管理してもらおうと考えています。本人が頑張れる環境さえつくってあげれば、営業は結果が出る。これは間違いないですからね。

安藤 すると、金沢さんにとって次に大事になるのは、そのマネージャーの管理ですね。

「彼は自分にできないことができるから」と、“任せきり”にしては絶対にいけないです。彼は金沢さんの部下であることに違いはないわけですから。「評価」をやめてはいけません。

金沢 そうなんですよね。実は今、彼の評価制度をどうしようか、すごく悩んでいるんです。

安藤 でも、それを考えているのはいいこと。絶対につくったほうがいい。もちろん、誰が見ても納得できるフェアなものを、ね。

金沢 会社には利益を残さなければいけない。一方で、彼もプルデンシャルの年収を捨てて来てくれるわけだから、「結果」を出したらプルデンシャル時代よりも年収が上がる可能性もつくらなければならない。いかに公平な評価制度をつくるか。とても難しいところです。

 そう考えれば、プルデンシャルの評価制度ってすごいんですよね。誰の主観もないですから。出した「結果」だけを見る。だからいたって平等なんです。

 僕と同期が、同じトレーニングを受けて、同じ商品を扱って、同じオフィスに通っている。それなのに年収が100倍違うとしても、誰も何も文句を言わないのは、完全に公平な評価基準だからです。それができているのは本当にすごい会社だと、改めて感じます。

安藤 だから大きくなるんですよね。

金沢 僕も、周りがどれだけサボっていても関係ありませんでした。自分がやればやるほど収入として返ってくる、フェアなシステムでしたからね。これから自分がどのような評価制度をつくるのか。「ひとりひとりが頑張る環境」を整えるために、大きな課題だと感じます。