マタン君は、両親が旧ソ連出身で自身もロシア語を話すこともあり、ロシア語を得意とする著者にとって、ヘブライ大学で最も仲の良い友人の1人だ。卒業論文の参考文献探しを手伝ってくれたり、週末には自宅に食事に招いてくれたりと、何かとお世話になっている。

 私の個人的な印象だが、イスラエルの人は、一度仲良くなると非常に義理堅い。約束は絶対に守るし、受けた恩は忘れない。私もそれに倣って、何かとお礼を言うようにしている。

 そんなマタン君の力添えもあり、電話を受けてから20分後には接種所に到着していた。

到着すると
接種所は既に黒山の人だかり

 会場はエルサレム北部にある文化センターだった。私のように無保険で受けられるといううわさ話を聞きつけた人々で、既に黒山の人だかりができていた。ソーシャルディスタンスは皆無。

「ワクチンを受けに来てコロナに感染した」と恨み節を言う人がきっと数人いるだろうなと、思わず不安になった。

ワクチン接種所に集まる人々ワクチン接種所に集まる人々 Photo by Yuki Tokunaga

 行列を観察しているとあることに気づいた。2つの行列があって、片方はイスラエル国籍を持つ人々(ID組)、もう片方は外国人(パスポート組)のようだった。

 イスラエルの国籍も市民権もない私は、当然ながら、パスポート組の列に並んだ。文字通りさまざまな国籍の人が列で待っており、そこで話されていた言語も、数えた限りで5種類はあったと思う。

 偶然前に並んでいたのは白人の女性だった。話を聞いてみるとハンガリー出身のユダヤ人で、イスラエル国籍を申請している最中だという。おばあちゃんがユダヤ人であることを証明する書類が見つかって、もうすぐ国籍がもらえるという(イスラエルでは、1.母親がユダヤ人である、2.正規の手続きに従ってユダヤ教に改宗する、のどちらかを満たすことでイスラエル国籍を取得できる)。

 周りには多くのユダヤ人、保険に加入していないもの、国籍がないもの、いろいろな人がいた。