株価の「人気」部分の
長期リターンはマイナス
株主資本の成長によるリターンは2.4%を示しています。その標準偏差、つまり振れ幅は少なく、3.1ポイントです。同様に、配当によるリターンは1.2%という小さめな数値ながら、その振れ幅は0.6ポイントとさらに安定した数値を示しています。これら「実利」の部分を合計したリターンは3.6%で、標準偏差は3.2ポイントという安定ぶりです。
次に、評価変動リターンのほうを見てみましょう。そのリターン値は▲2.3%というマイナスの値です。しかもその標準偏差は24.5ポイントとケタが一つ違う高いレベルです。つまり「人気」の部分のリターンというものは、大きな上下動を繰り返した末に、蓋を開けてみたら結局マイナスのリターンだったのです。
経営者の中には、「株価などというものは、企業の本当の実力から乖離して勝手に上下を繰り返すのだから、そんなものを気にした経営はできない」という方がいます。しかしそんなコメントはたいがいの場合、「人気」部分による短期の株価変動に着目しているだけです。長期の本質的な株価変動をよく見れば、そんな「人気」の部分は剥がれてしまい、「実利」の部分だけが株価の説明要因になっていることに気がつくはずです。
短期で動く人気などを気にすることなく、利益をしっかり積み上げていくことで株主資本を増殖させ、その一部を適切に配当すれば、株価はきちんと上がっていく。良い経営を行っていれば、長期的には経営者や従業員だけでなく、投資家も含めたみなの資産を殖やせる。「みなで豊かになる経営」を目指す経営者にとって、この分析には重要な示唆が含まれているのです。
(本原稿は『三位一体の経営』の内容を抜粋・編集したものです)