■執筆者紹介
中神康議(なかがみ・やすのり)
みさき投資株式会社 代表取締役社長
慶応義塾大学経済学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校経営学修士(MBA)。大学卒業直後から経営コンサルティング業界に入る。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)、コーポレイトディレクション(CDI)のパートナーとして、20年弱にわたり幅広い業種の経営コンサルティングに取り組む。クライアントとともに優れた戦略を立案・実行することで企業価値が大きく向上し、結果として株価が上昇することを数多く経験。「働く株主®」のコンセプトを考案し、2005年に投資助言会社を設立。投資先企業の経営者と一緒になって企業価値向上のために汗をかくというスタイルで圧倒的な投資パフォーマンスを生む。2013年にみさき投資を設立し、現職。みさき投資はそのユニークな投資スタイルと圧倒的な投資パフォーマンスによって、米国ハーバード・ビジネス・スクールの教材にもなっている。
ウォール・ストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズ、ブルームバーグ、ロイターほかメディア出演多数。著書に『投資される経営 売買される経営』、共著に『ROE最貧国 日本を変える』『経済学は何をすべきか』(すべて日経BP)がある。独立行政法人経済産業研究所 コンサルティングフェロー、日本取締役協会 独立取締役委員会委員長。

<大反響! 連載人気ランキング>
第1位:誰がやっても採算がとれない個人宅配事業で、ヤマト運輸はどう利益を上げたのか
第2位:業界の素人なはずのコンサルタントはなぜ的確な戦略が立てられるのか?
第3位:参天製薬がMR教育に「呆れるほどのコスト」をかけている理由

再現性のある経営構想で
「みなで豊かになる経営」を実現する
――著者からのメッセージ

 経営から少し距離を置いた投資家という立場から見ていると、経営の「伸びしろ」が岡目八目的に見えることがあります。そんなときに経営者が胸襟を開いて投資家を受け入れ、一緒になってその伸びしろに取り組むと、実際に経営は良くなります。経営が変わると会社の本質的価値が上がり、いつの間にか株価も上がっていきます。

 私たちのような投資家はもちろん、長いこと会社にコミットしてきた経営者や従業員のみなさん自身が、その成果を大きく享受できるのです。

 立場は全然違うけれど、経営者と従業員、そして株主という三者が一体となって変革に取り組めば、みなで豊かになれるんだ……。あちこちで見られるそんなエピソードを、もっと普遍的な経営構想に仕立て上げ、いろんな会社で実行してもらい、みなで豊かになることはできないものか──。これが、本書『経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営』を書いてみようと思ったきっかけです。

経営コンサルティング一筋から一転、
経験なしの投資業界へ

 私は大学を卒業してから、経営コンサルティング業界で長年過ごしてきました。約20年間、クライアントの経営が少しでも良くなるように、経営者と一緒に汗をかいてきたつもりです。

 経営者とコンサルタントが一体となって良い仕事ができたときには、会社は大きく変わります。そして会社が変わると会社の価値も上がり、それにつれて株価も大きく上がるという体験を何度もしてきました。売上高が1000億円もあるのに利益は20億円しか出ていなかった企業が150億円もの利益を出せるようになったり、株価が10倍になったりするクライアントもありました。

 「会社が良くなれば株価も上がる」。これは私にとって、とても手触り感のある体験なのです。このシンプルなロジックが、約15年前に私の背中を大きく押してくれました。経験ゼロの人間が、投資業界へ転身したのです。

リーマンショック下でも
投資先の株価は2倍に

 自分が大好きな会社・大好きな経営者に投資し、「会社にとって何が良いことなのか」を一生懸命考えて提案を持っていく。経営者と議論することで会社や経営への理解が深まり、自信を持って長期・大型投資に踏み込む。経営者と投資家が真剣に知恵を出し合い、汗をかいていく……。そんなことを繰り返す中で、リーマンショックの年でも株価が2倍になった投資先や、全上場企業の年間株価上昇率ランキングで1位になる投資先が出てきたのです。

 私はほんの10社程度にしか同時に投資しないスタイルをとっていますから、そういう投資先がいくつか出てきただけでも、驚くほど高いパフォーマンスが得られます。実際、ある世界的なファンド調査機関から「アジア・ベスト・ファンド賞」をもらったり、株式市場研究家の方からは「日本株式運用史上に輝く金字塔」とまで言われたりしたこともあります

 それはそれでもちろん嬉しいことなのですが、そんな個人的な喜び以上に、思ってもみなかったことが私の周りのそこかしこに見られるようになりました。それが「投資家だけでなく、経営者自身や数多くの従業員のみなさんが、いつの間にかお金持ちになっていた」という事実です。これらのエピソードを普遍的で再現可能な経営構想に編集し提案することが、本書『経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営』の執筆の目的なのです。

 本書の内容を実践し、読者のみなさんが「みなで豊かになる経営」を実現させることを願ってやみません。


本書の主な内容

中神康議著『経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営』定価2,420円(本体価格2,200円+税)、ダイヤモンド社

はじめに──経営者だけでなく、従業員、株主も合わせて豊かになる経営

序章 なぜ経営に「厳選投資家の思考と技術」を取り込むべきなのか
・「厳選投資家の思考と技術」が「攻めと守りを兼ねた妙手」を生む
・アクティビストにつけ入るスキを与えないための予防策にもなる ……など

第I部「みなで豊かになる」メカニズム

第1章「みなで豊かになる経営」の鉄則――複利
・ほんの数%の差でも複利で長期間運用すると何十倍もの差に
・「複利の経営」は「長期の株価」に表れる ……など

第2章 「みなで豊かになる」フェアウェイ――超過利潤
・超過利潤を出していないと、「指数関数的に」価値が小さくなる
・「今」超過利潤を出せていないなら、「これからも」出せないと判断される ……など

第II部 事業を圧倒的な強さにする

第3章 まずは十分な利益率を確保する――事業経済性
・すべての事業は四つの「型」に分類できる
・儲けの出方は、「コスト構造」と「共有コストの範囲」で決まる ……など

第4章「利回り」を作り、競合他社から守る――障壁
・「真の障壁」は3種類しかない
・障壁が築けない事業でも使える唯一の手とは ……など

第5章 障壁づくりの必要条件――リスクとコストという「投下資本」
・儲けのメカニズム1  呆れるほどのコストを投入する
・儲けのメカニズム2  腰を抜かすほどのリスクを取る ……など

第6章 障壁づくりの十分条件――事業仮説
・ビジョンは「大衆合議」からは生まれ得ない
・誰がやっても採算がとれない個人宅配事業で、ヤマトはどう利益を上げたのか ……など

第III部 全社を導く

第7章 リスクテイクに向けた体制をつくる――勝者の呪い1 集団意思決定
・「集団でリスクを取る術」には、すでに正解がある
・監督・経営・執行を分業することで大企業病を排除する ……など

第8章 高い利回りを持続させるためのBSマネジメント ――勝者の呪い2 平均回帰
・平均回帰から脱却するための方策1 現金保有を最適な水準に保つ
・平均回帰から脱却するための方策2 配当は投資機会の有無で決める ……など

第9章「経営を撹乱するもの」から身を守る――アクティビズム
・アクティビストに狙われる企業の二つの特徴
・危機対応のための大量の資金供給がアクティビストに流れる日 ……など

終章 最速で「みなで豊かになる」――三位一体の経営
・経営者と投資家の本質的な「機能」は似ている
・日本企業が「投資家の思考と技術」を経営に取り込む3ステップ

解説――「長期」の本質 楠木建