都立「日比谷高校」はなぜここまで復活できたのかほとんどの生徒が部活動にも意欲的に参加している。“日比谷高校屈指のマニアックな部”を自負する雑草研究会は、マスコミにもたびたび登場

「文武両道」の現代的意味

――進学実績を上げるため、勉強以外の“余計なこと”はしないということはないのですか。

武内 そういう生徒はほとんどいないと思います。学校行事や部活など、やるだけやってから自分の入試に向かっていくという生徒がほとんどです。

 校長着任の1年目から、高い意欲を持つ生徒に選んでいただきたいというPR活動を展開しました。その結果、40人ほどの参加だった臨海学校の参加者が翌年には80人と倍増しました。また、SSHに3年間取り組んだ生徒には、スコア判定をして修了証を与えています。こうしたプラスアルファの学びが生徒のレベルアップに結び付いたと思います。

――共学校の場合、女子生徒の役割というのはいかがですか。

武内 学校行事をリードし、クラスをまとめる上で大きいと思います。海外研修では、手を挙げるのは圧倒的に女子です。以前からあったボストンとニューヨークに加えて、私の就任後に、ニュージーランドや韓国の姉妹校も増やしました。

――一方で、男子生徒が受動的ということはないですか。

武内 私の世代では女子と話すと身構えてしまいますが(笑)、授業中、対話を男女で行っても、すごく自然体で、性差を感じさせません。

――部活動も盛んですね。オーケストラが有名でしたか。

武内 今も元気に活動しています。高校に入ってから楽器を手に取る生徒もいますが、なんとかなるようです。他にもユニークなクラブとしては、雑草研究会がよくメディアで取り上げられますし、クイズ研究会はテレビに出たりしていますね。ただ、これ以上新しくできてしまうと、顧問の先生が足りなくなります。体育系と文化系の2つが限界ですから。

――日比谷独特の学校文化というものはありますか。

武内 不易の部分、公立の伝統校では「文武両道」を挙げるところが多いと思います。「武」の部分は、学校行事や部活に尽力するということで、勉強と両方できないと生徒同士でリスペクトされない。真面目で素直な生徒が増えている印象です。

――昔、あるOBの政治家が、高校から見える国会を指さして、「やがてあそこに行く」と言っていたという逸話もありますが、最近の生徒さんはどうでしょう。

武内 政治家志望の生徒はほとんどいません。そういう意味では変わってきているのでしょうね。
    
 卒業生の進路は、SSHの海外派遣生は追跡調査をしています。民間企業の研究職に就き、博士課程に進む生徒も多いようです。官公庁や法曹界も多いですし、もちろん民間企業も多い。今年度の講演会では、農林水産省と外務省の卒業生に出てもらいました。高2生を対象としたキャリア教育の星陵セミナーには、50~60代の各界で活躍されている20人くらいの卒業生にいらしていただきました。

※第2回(3月31日公開予定)に続く