電話をする女性コロナ禍で生活保護への期待が高まる中、扶養照会の存在理由が問われている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

生活保護の扶養照会に
仕込まれた「バグ」とは

 コロナ禍で先行き不透明な状況が続き、生活保護への期待が高まる中、福祉事務所から民法上の扶養義務者へ「仕送りできませんか?」などと問い合わせる「扶養照会」の存在理由が問われている。

 筆者が時折受ける相談の1つに、「かつて自分に家業の後継を強制しようとして脚を引っ張った田舎の親兄弟を、生活保護を申請してギャフンと言わせたい」というものがある。相談の主は、経済的には全く困っていない。それでも、現在の生活保護と扶養照会の仕組みを活用すれば、目的を達することは可能かもしれない。

 生活保護の申請は、日本国民に保障された権利である。本人が富裕層であっても同様だ。申請の際には、収入と資産の状況、居住の状況が分かる書類を持参するとよい。その際、親族の状況についても聞き取りが行われたり、記入を求められたりするであろう。親族の住所や氏名は隠さずに述べ、過去や現在の確執については黙っておけばよい。

 申請を受け付けた福祉事務所は、原則として2週間以内に保護の可否を判断し、書面で本人に通知する。むろん、本人の収入や資産、居住状況についての調査が行われるのだが、もともと所得を全て税務署に把握されている職業に就いており、資産隠しも行っていないのであれば、失うものは何もない。ただ、生活保護の対象にならないだけである。

 この間、親族は「あなたの息子さん(お兄さん)のAさんが、B市役所に生活保護の申請に来ました」といった通知を受け取った後、「Aさんに仕送りなどの援助はできませんか」という扶養照会の書面を受け取ることになるであろう。もしかすると、いきなり扶養照会の書面がやってくるかもしれない。