政府は、東日本大震災からの復興に向けて、5年間で少なくとも19兆円規模の予算を、復興予算として充てる方針で、昨年度は補正予算として、合わせておよそ15兆円を計上し、今年度は、復興特別会計として3兆8000億円近い予算が計上されている。

 こうした復興予算19兆円の財源については、そのうち半分以上の10兆5000億円を復興増税として、所得税や住民税の臨時増税で賄うことが決まっているが、この復興予算を使って、被災地の復興とは関連性の薄い事業が行われているという指摘が出ている。

たなか・ひであき
1960年生まれ。1985年、東京工業大学大学院修了(工学修士)後、大蔵省(現財務省)入省。内閣府、外務省、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年4月から現職。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、政策研究大学院大学博士。専門は予算・会計制度、公共政策・社会保障政策。著書に『財政規律と予算制度改革』(2011年)

 例えば、農林水産省が獲得した調査捕鯨に対する反捕鯨団体の妨害活動への対策費23億円、文部科学省の要求によって、核融合に関する研究拠点を青森県と茨城県に作るための費用に42億円が充てられるなどである。新聞やテレビの報道により、復興とは直接関係ない予算が次々に明るみになっている。国民の厳しい批判を受けて、政府も復興予算の使われ方が適切かどうかを検証する必要があると答えざるを得なくなっている。

世の中の批判は
霞が関には届かず

 今回指摘された復興予算の使い道について国民は怒っているが、政府あるいは霞が関の立場から言えば、何が問題なのか、今さら何を言っているのか、と反論したいところであろう。なぜなら、被災地以外に復興予算を使えることは、復興の基本を定めた法律である東日本大震災復興基本法に規定されているからである。