老衰死の実態
「療養病床」での死が多い

 テレビドラマや映画で穏やかな死、大往生の場面はほとんど自宅である。家族や訪問診療医、訪問看護師、ケアマネジャーなどに見守られながら住み慣れた自宅で息を引き取る。だが、現実はそうでもない。

 これまで述べてきたように、実際は病院での老衰死の方が多い。病院といっても、「その多くは療養病床であろう」とみる医師たちの声が聞かれる。急性期の一般病院と異なり慢性期の患者を引き受けるのが療養病床。心身の衰弱が重い高齢者が比較的に長期間入院する病院である。介護保険内の介護療養病床と医療保険対象の医療療養病床、それに、最近は介護医療院という新タイプも含める。

 病院として、延命治療のために胃瘻(いろう)などの経管栄養や点滴、人工呼吸器などにこだわるところもある。多臓器不全で寝たきりに近い状態で亡くなると、老衰死と死亡診断書に書かれやすい。

 一方で、自然な看取りも広がってきた。「本人や家族の思いを実現しようとすると、そうならざるを得ない」と打ち明ける病院もある。

 東京都渋谷区に3棟、322床を持つ「セントラル病院」。60床が介護療養病床で残りは医療療養病床。年間250人以上が亡くなるが、「そのうち過半数の死因は老衰です」と山下晋矢・統括院長。同病院に入院している高齢者の多くは、「認知症や高血圧、誤嚥(ごえん)性肺炎、心不全などいろいろな基礎疾患を持っている。特定の疾患を死因とするのは難しい」と話す。

 加えて、「本人や家族たちの死生観がこの十数年で変わってきたこともある」と言う。「高齢化が進み、自身の心身の劣化を認め出してきた」と考え方の変化を感じると話す。

 同病院では、終末期の医療について家族からの記入を求める「入院時確認書」を作成し活用している。その中で「A:積極的な治療を望む(出来る限りの延命を行う)」、「B:自然な臨終を望む(無理のない程度の対応を行う)」、「C:自宅に連れて帰りたい」の中から選択を求めているが、「大部分の人はBを選んでいます」と山下院長。そこで「無理のない程度の対応」というのは、苦痛を取り除いたり、酸素や点滴レベルの一般的な加療のことだ。

 また、飲食ができなくなったときに、経鼻経管、胃瘻(いろう)、中心静脈栄養、抹消静脈栄養のそれぞれについて「希望する、希望しない」の選択もしてもらう。