もちろん、苦しいのは医療業界だけではない。ただ、コロナウイルスとの戦いの最前線の一つが医療機関であることは間違いない。医療提供体制が崩れると、感染者数のわずかな増加で自粛が必要となり、他の業界をさらに苦しめる。

 そもそも医療は新型コロナウイルスだけでなく、それ以外の病気も診療できて初めて万全となる。コロナ診療をしている医療機関だけを助けても、わが国の医療提供体制は盤石にはならないのだ。

行政からの「お願い」だけでは
これまでの医療を変えることは難しい

 権限と責任の問題はどうか。結局、改正新型インフルエンザ特措法や改正感染症法を読んでも、行政が医療機関に新型コロナウイルス診療を命ずる権限を持ち、その結果に対して責任を持つようには読めない。

「要請」や「指示」「総合調整」なる言葉は出てくるが、どれくらいの強制力があるのかはっきりしない。イギリスのNHS(国民保健サービス)のように、「あなたの病院は1カ月後に、50人の重症患者のための病床を確保しなさい」というような具体的な指示は今も出ない。

 日本には民間医療機関も多く、法の権限は及ばないという識者の声も耳にする。しかし、そもそも日本の医療は国民皆保険であり、極めて公的な営みだ。この期に及んで「必要な法改正ができない」という理由は、その法が憲法に抵触しない限り見当たらない。

 大病院ともなると多くの診療科があり、それぞれに部長がいる。彼らの利害、各診療科を受診する患者さんの優先順位を調整するのは院長といえども容易ではない。

 行政からお願いされただけでは、これまでの医療を変えることは難しい。コロナ患者であるか否かにかかわらず、多くの国民の命を守ることが最重要課題だとすれば、パンデミックという災害医療(医療需要が医療供給を上回る状態)を各医療機関任せにしてはいけない。

「命令と責任の体系」「医療資源の再配置」「疾患の種類にかかわらず重症患者を優先するトリアージ」が必要だ。

中小の医療機関を中心に
コロナ診療に不安を覚えているところは多い

 最後に安全の問題だ。中小の医療機関を中心に人員と資金、ノウハウの問題で、コロナ診療に不安を覚えているところは多い。