発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から特別に抜粋し「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター。こちらは2020年8月9日の記事の再掲載です)。連載一覧はこちら

発達障害の僕が発見した「向いている職種」「破滅する職種」の見分け方

「失敗した経験」は自分を知る最高の材料

 発達障害のかたのなかには、毎日の仕事がうまくいかなくて、「自分は社会不適合者だ」と思っている人は多いのではないでしょうか。でも、一度敗れた人は、「自分が何に向かないのか」を知ることができます。これは、再起者の大きな強みです。

 実際に仕事という環境で戦い、敗れる。自分自身を知る上でこれ以上シビアな結果を得られるものはそうそうありません。これに比べれば、就職活動の「自己分析」なんてままごとみたいなものです。ゆえに甚大な苦痛が伴うという問題はありますが、それでも。

 僕の場合、学生の頃くらいまでは「なんだか僕は他の人が簡単にできることができないことがある」「なんか生きているのが苦しい」くらいの解像度だった「発達障害」という問題が、就職して全く仕事ができなかったという経験を経てやっと明瞭な理解に至ったと感じています。

 たとえば僕は、誰にでもできる事務仕事をやれば普通の人の20倍はミスをします。仕事の集中力が全く継続しませんし、また同時に突然強烈な集中に入って他のすべてが見えなくなります。2桁の足し算ですら信じられないほど間違います。ネクタイをつけていると首が不快でとても苦しく、突然うつがやってきて生産性が10分の1になったりもします。こういう人間にとって、僕が新卒で就職した「金融機関の事務」という仕事は、本当に向いていませんでした。

 反対に、うつ無職後に始めた「営業」は僕に適していました。お客様と対面している限りは集中力は続きますし、短期スパンで結果を競う営業職は出力ムラの大きい僕の性質にとても合っていました。ADHDの人によくある、獲物を追いかけるような高揚感を非常に好む特質も、数字=成果の仕事においては強みになりました。

この世の職業はざっくり4つに分類できる

 人の苦手なこと、できないことというのは細分化していけば多岐にわたります。一人一人が自分自身と向き合った上で理解するしかありませんが、この判断を助ける大まかな指針はあります。とてもシンプルなので覚えておいて損はありません。

 世界には数多(あまた)の職種がありますが、そのほとんどすべての仕事が次の4つの間でグラデーションになっています。