そこから学べるなら失敗してもいい

川原:日本の企業社会では、「達成」するとほめられます。この文化も、海外と大きく異なるものなのだと気づかされました。

 日本では100点を取ったらほめられるから、あらかじめ達成可能な目標を掲げる。そして予定通りに100点を取って、「よかったね」と言われますよね。

 でも、アメリカや中国では到底できそうもない壮大な目標を掲げるのが普通です。目標を達成できなくても責められません。「達成率60%だね。でもそこまで全力を尽くしたから素晴らしいね」と、チャレンジする姿勢が評価されるんです。たまに根拠のない自信を見せつけられてイラッとすることもありますが(笑)。

 でも、一人ひとりの才能や強みを生かすのはそっちであることは明らかです。日本は「達成」を大切にしすぎなんです。だから生産性が低くなっちゃうんですよ。

:あとは、なぜか成功が「みんなの共有物」になりがち。

川原:その通り!

:海外では、成功も失敗も独り占めするのが当たり前です。つまり、責任範囲が個人単位で明確なんです。一つひとつの仕事にオーナーシップを持たせているから、個人の能力が発揮されやすい。

川原:「あなたはこれとこれをやるために雇われている人です。このぐらいの時間で、この報酬でやってくださいね」と、一人ひとりと約束して雇用が成立しますから。

 その点、日本は範囲設定が曖昧だから、サービス残業も可能になってしまう。残業する前提だから、余力を残すために手前の目標も低くなる。

:「失敗や欠陥があってもいい。そこから学べばいい」という余裕がなさすぎるんでしょうね。

 ソフトウェアの業界でも、「日本の会社は完璧を求めすぎる」と言われているんです。日本のソフトウェア産業が発展しない理由の一つが、「製品は完璧でなければ出荷してはいけない」という呪縛が強すぎるからです。世界を見渡してみたら、そんな国どこにもありません。このclubhouseだって、リリースして1ヵ月近く経っているのに落ちまくるし、謎のバグだらけじゃないですか。

 それでも、とりあえず回してどんどん直していこう、という発想です。シリコンバレー発のものづくりの強みだと思います。人生も同じで、全部うまくいくわけないという前提に立って、ガタピシしながら進んでいこうぜ、と考えているんです。

 もちろん、派手にこけたら落ち込むけれど、その時はいろんな仲間の力を借りればいい。50過ぎたらこんな境地ですよ。

川原:ありがたいです。

:とはいえ、僕だって失敗に慣れているわけではないですからね。いまだにドーンと落ち込むことだってあります。

 でも、それも含めてルーティンだと思えばいい。性格診断によると僕は、「行動することで立ち直るタイプ」らしいので、アウトプットは止めないようにしています。アウトプットを通じて他者貢献することが、一番の薬ですね。卓巳さんは落ち込むこと、あるんですか?