他人と比較するのは、もうやめよう

川原:もちろんあるんですが、『Be Yourself』という本を出したことをきっかけに、僕の使命は一人でも多くの人の“自分らしさ”を支援することであり、本気でそれに取り組むことが世界平和につながるのだと、心を決めたんです。そのために自分の身をすべて捧げようとフルコミットしているから、落ち込む暇なく全力で走っている感覚です。

:大きな転機を迎えたんですね。

川原:そうですね。これまでは「世界のKonMari」の黒子として影に隠れているほうがいいと、自分に制限をかけていました。なぜなら、麻理恵さんがより美しく神秘的に見えるためには、裏方の存在なんて見せないほうがいいというプロデューサーとしての判断があったからです。

 でも、麻理恵さんから「そうじゃない。卓巳さんが私にやってきたことを、もっと広い世界に生かすべき。次の人たちのために思い切りやってほしい」と言われたんです。

 だから、本を出そうと覚悟できたし、表に出ようと決意できた。内心では人からどう思われるのか怖くて不安だったけれど、もう思いっきり振り切って、「自分の命を全部使って貢献してから死んでやろう」と心を決めたんです。

 そうしたら、すごく楽になりました。最近よく思うんですよ。本当の“自分らしさ”って、自分自身のことを何も考えなくなった状態なんじゃないかって。

 誰かのために夢中になって、自分がどう見られているのかとか1ミリも気にしなくなった無我の状態が、一番“自分らしさ”を発揮できている気がするんです。たまに「このふざけたアイコンのままでいいのだろうか?」と気になることはありますけれど(笑)、それくらいですね。

:とても共感します。僕もやっぱり、自分の人生をかけて他者に対してアウトプットをしている瞬間が、一番自分らしいと思えるときなんですよね。

 卓巳さんの『Be Yourself』と深くつながるなと感じるのは、僕もずっと「Being」というワードを伝え続けていて。つまり、「それぞれに、ありたいように生きよう」というメッセージです。

 では、僕にとっての「Being」はなんなのかと聞かれたら、「最大多数の最大幸福」なんです。自分が接することができる最大多数の人たちが、ハッピーになってもらえるように働きかけていきたい。

 だから今この瞬間も含めて、「誰かに対して何かをしている」というすべての時間が僕が“自分らしさ”を発揮できる時間なんです。ただし、いつも他者貢献のためにアウトプットし続けると枯渇してしまうので、充電も大事にしています。

川原:同感です。充電はとても大事です。

:それもあって、最近、海辺にセカンドハウスを入手したんですよ。誰もいない浜辺を散歩するだけで、海と空と砂と風だけの空間の中で、自分が充電されていくのが分かります。自分らしさを発揮するために、しっかり休む。メリハリの効いた生活の設計も大事だと思いますね。

川原:おっしゃる通りです。自分自身が良い状態であることこそ、貢献のスタートです。実は、『Be Yourself』にもそのことをたっぷりと書いたんです。

 社会のために役立つ自分になろうと本気で思うなら、まず自分自身を心地よい状態に保つことが不可欠。

:自分らしくあることって、実はすごくシンプルな心がけで成り立つんです。難しく考えるのはやめよう、と言いたいですね。

 この記事を読んでくださる方に、約束してほしいことが一つあります。それは、「他者と比較して自分を評価するのはもうやめましょう」ということです。

 比較するとしたら、過去の自分、昨日の自分。「昨日よりも今日の自分はちょっとイケているな」、その連続で十分に満点なんです。

 自分という歴史が右肩上がりであればいい。僕はガタピシしながら50年以上生きてきて、「遅咲き」を自認していますけれど、本心では全然遅いなんて思っていないですからね。

 僕には50年の時間が必要だったというだけで、そもそもあと100年は生きるつもりなので、まだ序盤です。

川原:ますます神に見えてきました(笑)。改めて澤さん、今日はすばらしいお話をありがとうございました。勇気をいただける言葉をたくさん受け取りました。

 人生は誰にとっても二度と味わえない宝物。「この人生を生きられてよかった」と思える人を一人でも増やせるように、僕も全力を尽くしていきます。