その先にある成功の因果のイメージに
責任者が確信を持てるか

 数値分析から導かれる戦略的な方向性や施策を立案することはできますし、この精度を上げることで、戦略そのものの精度を上げることは可能です。

 しかしロジックの世界では事象をモデル化して考えます。そこには常に、まだ表現されていない重要事項がどこかに存在する可能性が付きまといます。

 『ブルー・オーシャン戦略』で知られるW・チャン・キム教授は2018年に来日した際に、今の日本企業は80年代の競争戦略に未だに捕われたまま閉塞状態から抜け出せなくなっていることを指摘しました。事業創造に成功したトップの中には「非常識の経営」を標榜する経営者が少なからずいます。

 洋服の青山を起こした青山五郎氏。

 ドン・キホーテの創業者の安田隆夫氏。

 皆、自ら、業界の常識を覆したと語られます。

 これを、非常識だから成功したのだと、非常識そのものを正当化する勘違いをすると大変なことになります。

 正しくは、皆が信じている「既存のロジック」、つまり常識には、常に語られていない不備な部分がつきものであるという意味です。それゆえに行き詰まりがあったところに、新たな「価値の軸」の存在、すなわち可能性を見出し、事業を具現化して成功させたのです。

 もっとも重要なことは、その先にある成功の因果のイメージに責任者が確信を持てるかです。

 重要なのは、戦略を描いた資料や、ものまねをする対象をただ眺めるのではなく、たとえばお客様が笑顔で来店して、満足して帰られるシーンをイメージできるかどうかです。

《Point》
 完全なる成功の因果など、最初からわかるわけなどない。しかし現場感、事業観の上に、ロジカルな思考を鍛えていれば、経験がそこに正しくチャージされ、視界が開けてくる。成否を分けるのは、常に実験中であると捉えて真の成功則の因果を求め続ける、実践段階でのPDCAの力。