時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売。好評につき発売6日で大増刷が決定! 日本経済新聞の書評欄(3月27日付)でも紹介され大反響! 本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。好評連載のバックナンバーこちらからどうぞ。

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人と健全な組織は、PDCAを廻して進化を重ねていく

 経営学者が発表し、コンサルタントが用いる分析のためのフレームワークの多くは「静的」なものです。それらは現状をうまく整理するためには有効ですが、現実のビジネスでは、人や競合企業がそれぞれの想いに沿って動き、「時の流れ」の中で作用しあいながら、かつ、知恵を絞ったイノベーションを起こしながらダイナミックに物事が進みます。

 人と健全な組織は、PDCAを廻して進化を重ねていきます。

 この時間軸の上でその先に起こる作用や出来事は、一般的に「静的」な分析だけで戦略立案を行う戦略系のコンサルタントには、イメージすることができません。

 たとえば、QCD(品質、コスト、納期)は、ものづくりの業務フローのパフォーマンスを示す3軸であることはすでに述べました。このQCDが議論される時には、

「品質Qを上げる、あるいは納期Dを短くするにはコストCがかかる」
「品質Qを犠牲にしてでも、コストCを下げるべきか」

 という議論が、マイケル・ポーターの論文などでも当たり前のようになされていました。

 しかしながら、現実に世界の市場を席巻していったトヨタをはじめとする日本の自動車会社は、そのような経営学者たちの意見などは無視して「知恵を使え」と「カイゼン」を重ね、

「品質Qを上げ、納期Dを短縮し、しかもコストCを低減させる」

 という「頭のいい人たち」の決めつけをあざ笑うような離れ業をやってのけました。

 これが企業の「実践力」と呼ばれるもので、「静的」な分析に対して、時間軸の上での「動的」な努力と実践におけるPDCAで達成される進化なのです。