「やっぱり対面してから入社を決めたい」
コロナ禍で就職先は“地元志向”へ?
感染リスクを避けるためなら、Web説明会やWeb面接を活用した就職活動を行えばよいのではないか、と思われるかもしれない。
確かに昨年の今頃は、面接などを対面式で行う企業などに対しては、学生からも「時代遅れな会社」「ブラック企業ではないか」と不安の声があった。しかし、実際に就職活動を続ける中で「対面」を重視する学生が増えたようだ。
「もともと日本の新卒採用は、職能によるマッチングではなく、ポテンシャル採用のため、フィーリングのマッチングが重視されてきた。社員の人柄や社風などは学生側も重要視する部分で、遠距離移動することなく、対面の面接や面談ができる“近場の企業”を選ぶ傾向が強まったのでないか」(増本所長)
前出の『就職白書2021』において、学生に「説明会」「面接選考」「内定後の面談」ではWeb・対面のどちらがいいかを尋ねたところ、「個別企業・各種団体等の説明会・セミナー」については、「Webの方がよい」が55.8%だったが、「面接選考」「内定後の面談」に関しては、「対面の方がよい」がそれぞれ53.7%、56.4%に上っている。対面を選んだ学生からは、「対面の方が自分を分かってもらえる」「対面の方が会社の雰囲気がつかみやすい」という声もあった。
同調査における「その他地域」でのWeb面接の実施率は60.2%と、全体の69.8%や首都圏を含む「関東」の78.4%を下回ったが、採用数が充足できたのは、対面して雰囲気をつかみたいという学生の心理も働いたからかもしれない。
「コロナ以前から、今住んでいる(大学キャンパスがある場所を含む)地域に愛着を持ち、将来的にその地域で働きたいものの、意中の会社がない、都会の会社の方が魅力的に見えて、その地域を離れる学生が少なくなかった。しかしコロナ禍で就活をした21年卒学生にとっては、対面式の面接などを通して実際に雰囲気がつかめた身近にある企業の方が、入社の意思決定をしやすかったのではないか」(増本所長)
Webを活用した就職活動は就活生にも企業にとっても、選択肢を増やしてくれるチャンスになっているのは間違いない。しかし、Web説明会などには気軽に参加しても、実際に会ってみないと、入社するかどうかは決められない――。そんな就活生の本音が、就職先の“地元志向”という結果につながったのではないだろうか。