標準的なサイコロを調べると、一定のパターンが見つかる。たとえば、1、2、3の目が見えるようにサイコロを持つと、こんな感じで必ず反時計回りに数字が大きくなっていくことに気づく。
さて、まだ数字が書かれていないサイコロを用意し、3つの面に反時計回りで1、2、3の目を書き込み、さらに各数字の裏に同じ数字を書いて、いんちきサイコロをつくるとしよう。すると、サイコロの向きによっては、この3つの数字が時計回りに増えていくことに気づくと思う。いんちきサイコロをつくるとき、どの方向から見ても時計回りにならないようにするのは、どうやっても数学的に不可能なのだ。
サイコロは確率もまぎらわしい。偉大な数学者で哲学者のゴットフリート・ライプニッツは、2個のサイコロを振って11が出る確率は12が出る確率と同じだと言い張るというまさかのまちがいを犯した。合計がその数字になる組み合わせは、11の場合は(6, 5)、12の場合は(6, 6)の1通りで変わらない、というのが彼の考えだった。でも、本来5と6の目はどちらのサイコロで出てもかまわないという事実を考慮しないといけない。よって、12が出るケースは(6, 6)の1通りしかないけれど、11が出るケースは(5, 6)と(6, 5)の2通りあると考えるのが正しい。
この種のまちがいはありふれている。なので詐欺師は、パッと見ではよい賭けに見えるけれど、実は確率の計算ミスを犯しやすい賭けを提示するというやり方を常套手段としている。