外部の専門家を活用することも
選択肢の一つにする

 私もこの業界に30年以上関わってきたが、長いデフレ経済の中で、値上げや契約解除の要求というものは見たことがなかった。その間、管理組合や理事会は管理委託費の値下げを目指し、リプレイスや相見積もりの取得にやっきになる一方で、管理会社は何とかそうした要求に応えつつ、耐えるしかない状況が続いていた。だから、数年前に大手のデベ系管理会社から始まった値上げや契約解除の要求は、起こるべくして起こった事象だと考えている。

 本来、契約行為は、お金を払う顧客と業務を受託する会社とが対等な立場であるはずだが、マンション管理においては、いつの間にか顧客が圧倒的に強い「買い手市場」となっていた。

 ところが、近年では人口収縮によるフロント担当者不足に加え、管理員の採用にも苦労するようになり、現在では完全な「売り手市場」といえる。今でも「管理戸数を増やしたい」という戦略で、安値での受注に向かっている管理会社もあることはあるが、多くの管理会社が「量より質」を目指し、利益重視の方針を取るようになっている。つまり、管理会社が顧客を選べる時代になったというわけだ。

 そこで、これまでは強気一辺倒でよかった管理組合も、これからは自分たちが負担すべきところはしっかりと対応しつつ、管理会社の言いなりになることのないように、主体性をもって正しく対処することが求められる。

 そうは言っても、価値観も生活環境もバラバラな区分所有者たちが、1年や2年程度の任期で理事会を運営する現状のシステムでは、管理組合や理事会を良い組織に育てることは至難の業だ。そして、そのことを一番知っているのが管理会社である。だから、管理会社は理事会の弱点を見抜き、手練手管でさまざまな案件を持ちかけてくる。素人集団の理事会が、百戦錬磨の管理会社に対抗するのは非常に難しいのだ。

 本来、管理組合や理事会は「将来、こういうマンションを目指そう」というビジョンを持って、継続的に運用できる仕組みを作るべきである。その仕組み作りや支援を外部に求め、専門家を活用することも選択肢の一つとして考えるといいだろう。

 国土交通省は「マンションの管理の適正化に関する指針」において、「外部の専門家の活用」を可能とする改定を行い、それを受けて「外部専門家活用ガイドライン」を公表している。

 ガイドラインは「区分所有者の高齢化などによる理事や役員のなり手不足」や「マンションの高層化・大規模化などによる管理の高度化・複雑化」といった、管理組合が抱えるさまざまな課題に対し、外部の専門家を活用することで解決策を見いだすことを目的に制定されたものだ。外部専門家の要件や事故があった場合の措置などについての具体例が示されているので、外部専門家への依頼を検討する際の参考になるだろう。

 いつまでも住みやすいマンションを維持するために、管理組合や理事会は積極的に外部の専門家に協力を仰ぎながら、管理会社に“食い物”にされることなく、かつ管理会社が適正な利益を得ることも考慮できる、バランス感覚のある組織を目指していただきたいと思う。