オリパラ開催を左右する
「政治とカネ」の3つの問題

 しかし、ここで問題をややこしくする要素が二つ出てきます。「オリンピックは金になる」ことと「オリンピックは政治に使える」ということです。そしてこの観点で関係してくる政治家と企業のトップの判断が悪すぎます。オリンピックとは関係ない話かもしれませんが、マスターズに優勝した松山英樹さんになぜ国民栄誉賞の声がでないのかだけを考えても腹が立ってきます。スポーツへのリスペクトに関する国の上層部のセンスを疑います。

 とはいえ、今回はオリパラの記事ですので、それに関連する象徴的でちぐはぐな問題を3つ挙げてみましょう。一つは大阪で第4波が拡大する中で、恣意(しい)的な運用で東京にも緊急事態宣言が発出されたことです。

東京都への緊急事態宣言に潜む
統計のトリックとは?

 緊急事態宣言を決めた4月23日に大阪で1162人、東京でも759人の新規感染者が出ました。この数字を見ると一見、東京も大阪と同じくらいひどいように見えてしまいます。ところがこれは統計のトリックで、本当は人口当たりで見ないと真実は見えてこないのです。

オリンピック・パラリンピックは「何がなんでも開催する」と断言できる理由公表データを基に、筆者作成
拡大画像表示

 4月26日時点での人口100万人当たりの現在患者数を並べてみると、東京は都道府県ランキングでは8位です。そこに緊急事態宣言を判断する重要指標である病床使用率を並べてみると、東京はステージ4に相当する50%以上のひっ迫度にはなっていないことがわかります。

 この表からわかることは第4波の感染は大阪を中心に地続きで起きていて、兵庫から徳島へ、そして京都、奈良、和歌山へと広がっていることがわかります。京都以外のこれら府県では病床がひっ迫しているわけで、本来はこれらの府県こそが緊急事態の対象地域に指定されるはずです。

 ところが奈良県は緊急事態宣言のせいで逆に大阪府からの買い物客や観光客で大にぎわいになりましたし、徳島市は4月中旬の第4波直撃の最中にこの夏の阿波踊りの開催を発表するような状況です。医療現場の崩壊と、各府県の宣言要請のミスマッチが起きています。

 その一方で病床がひっ迫していない東京都では、GWの17日間、飲食店では酒の提供が禁止となり、百貨店は営業停止を余儀なくされています。

 これらの状況が意味することは、「奈良や徳島や和歌山や沖縄の医療対策は不要。とにかく東京の人間がGW中に大阪や京都や沖縄に旅行に行って感染して戻ってこないように徹底しよう」と政治家が決めているようにしか思えません。

 それだったら最初に申し上げたように「五輪開催が東京のスポーツ界と国際社会に対する責務だから東京もそうするのだ」と言えばいいのに、誰もその点については口をつぐんで話さない。そしてあたかも3回目の緊急事態宣言は日本全体の問題ではなく、4都府県に限った局所的なものであるように政治家が演出しています。

 要するに、5月17日にIOCのバッハ会長が来日して最終確認をする段階での東京の感染収束を狙う政策が発表されている。問題はどの政治家もそう説明せずに説明責任を果たしていないこと、説明抜きに東京都民や企業の私権制限が強行されていること、そして結果として関西の兵庫以外の各県の医療現場の悲鳴は放置されていることです。これが今、起きているちぐはぐな出来事の一つめです。