緊急事態でも聖火リレーを中止できない
大人の事情

 次に「なんで聖火リレーはやっているの?」という話があります。

 3月25日に福島を出発した聖火リレーは、さすがに大阪府では公道を走ることは中止されましたが、同様に医療がひっ迫している和歌山、奈良、徳島では4月中に盛大なリレー走行が完了しています。このGWには病床使用率が高い沖縄を通り、5月後半には兵庫、京都へと戻ってきます。

 なぜ聖火リレーこそ中止しないのでしょうか。YouTubeなどで動画を検索して見ていただくとわかる通り、ただ聖火ランナーが走るだけではなく、長い車両の列が密を作りながらお祭り騒ぎのように通り抜けています。7月の東京五輪開幕を万全にする目的であれば、今は自粛すべきときなのに、なぜリレーを強行しているのでしょうか?

 その理由は聖火リレーが広告契約だからです。聖火リレーの長い車列はそれぞれのスポンサーが広告のために作成した車列で、「チーム○○」のようにスポンサー名を冠にしたコンパニオン走者たちが笑顔で沿道に向けてアピールして走ります。

 これが政治家にはどうにもならない、銀座の三越の営業は中止できても、スポンサーの広告までは止めることができないという大人の力関係があるのです。

 経済評論家として正直に言えば、この問題に関しては聖火リレーのスポンサー企業トップの判断力が悪いと思います。沿道ではリレーを見に来た地元の人が大喜びし現場好感度は高いので宣伝部長は気づいていないのですが、あれだけYouTubeでスポンサー車両が密を生み出している動画が流れているのは、企業イメージ上かえってマイナスだとわたしは思います。