デービッドソン前司令官が6年以内にと言ったのは、2027年のそういう状況を指してのことだ。さらに、アキリーノ新司令官は、皆が考えているよりもっと早いかもしれないと議会で証言している。

 これは、議会にPDI予算の承認を迫るという理由もあっただろうが、インド太平洋艦隊の司令官だったこともあり、もっと切迫したものを感じているのかもしれない。

台湾有事にはいくつかのシナリオ
巻き込まれではなく日本防衛のため

――仮定の話ですが、中国の台湾進攻があった場合、米国はどう出るのでしょうか。日米同盟の下で日本が巻き込まれる懸念がありませんか。

 台湾有事にはいくつかのシナリオがあり得る。だが、どのシナリオが起こったとしても、台湾海峡だけでなく台湾の周辺列島や尖閣諸島への介入が同時に起こることを予想すべきだ。

 例えば、まず台湾の政治・経済を不安定状態にしてから、偽情報やサイバー攻撃、要人の誘拐や暗殺、さらには工作員を侵入させて、都市や部隊に混乱を起こして、台湾山頂のEWR(レーダー)の破壊工作を行い、周辺地域への監視能力を減らして、軍事中枢をまひさせる。

 同時に、南シナ海の太平島や澎湖諸島、金門・馬祖島を奪取してミサイル・ロケットを配備し、東シナ海の尖閣諸島に大量の海警と海兵隊を接近させて日米の防衛力をひきつける陽動作戦をする可能性がある。

 北朝鮮にミサイルを日本の領海内に多数撃ち込ませて、海上自衛隊のイージス艦を日本海にひきつけるということもやるかもしれない。

 こうして台湾と米国の対応力を弱体化させ、東海岸付近に爆撃と艦砲射撃をして上陸するのではないか。

 これらのすべてが、同時に短期間で行われるということを前提に対応を考える必要がある。

 米国は台湾を防衛すると言っている。自分たちが民主主義や自由、人権という価値観を守る責務があると考えている。米国にとって台湾は条約上の同盟国ではないが、切り離すことはできない地域だ。

 台湾を守れなかったら他の同盟国との防衛上のコミットメントの信頼を失うことにもなると考えているはずだ。

 日本は直接、台湾を守ることはできないが、自国の領域を防衛しつつ、米国を全面的に支援して、米軍の来援部隊に基地や施設を貸すとともに、偵察・哨戒や、米軍への給油、弾薬・物資の補給などの後方支援をする。

 場合によっては台湾から避難する官民を受け入れることもあり得る。巻き込まれるというが、日本の防衛のためにやるのだ。