何にどのくらい
時間を使っているかを知る

 一方、部下の立場で考えると、本来は上記のようなことが自分一人でできるようになることが望ましい。そのためには、まず自分が「2週間はかかる」と思う仕事が実際にはどのくらいで完成させることができるのか、という工程の設計と見積もりの精度が重要になる。だいたい、優秀で真面目な一部の人を除き、2週間かかると思っても、実際に2週間丸々かけてその仕事をする人などまずいない。

 よくあるのはこのようなケースである。

 最初にとりあえず、レポートのテーマに関連する書籍を購入する。ネットで注文して翌日に到着したら、もうレポートが半ばできたような気がして放置してしまう。そのことは頭の片隅にありつつも納期の3日前まで何もせず、いよいよ締め切りが近づいてお尻に火が付き、ネットでサーチを始める。その中で使えそうな資料のようなものを発見し、その文章を上手にコピペする。さらに、購入した本の中から重要なコンセプトが表になっているものを見つけて、それを「パクリ」に見えない程度に作り直し、コピペの文章と表をパワーポイントに張り付けさも自分が考えたように美しく整理して前日の夜遅くに完成させる――。

 まともな上司なら一目で手抜きの資料だと見抜くが、いい加減な依頼をする、いい加減な上司であれば、パワーポイントの形式にうまく収まっており、そこそこページ数があれば何も引っかかりを覚えない。とりあえずめでたくレポートは受理され、一件落着である。

 まあ、だいたいこんなところであろう。

 しかし、このようなやっつけ仕事ばかりをしていると、

・レポートを作るために本来どのような工程があるのかが分からない
・レポートを作る上でどのようなことを深く掘り下げて考察すれば良いか分からない
・それぞれの工程を自分が実行するのに、どのくらいの時間がかかるのか分からない
・せっかく特定の領域についてレポートを書いても関連する内容について何も学んでいない

 といった残念なことになりがちである。

 このような一連の行為を仕事というか、作業というか、仕事ごっこというかは定義によるだろうが、いずれにせよ会社にとっても自分にとってもあまり良いことがないのは確かである。そして、もし能力の高い本物の上司がこのレポートを読むなら、瞬間的に「このレポートを書いた社員は期待をかけるべき人材ではない」と評価してはばからないであろう。

 いい加減な納期設定、いい加減な工程設計、「パクリ」の内容で分厚いだけのレポートの量産――このような無駄な慣習は一刻も早くやめなければならない。