短納期で修正し
とにかく実行!
そもそも論として、本社部門や間接部門は、レポートや書類作成に対して時間をかけすぎていることを認識しなければならない。レポート作成の時間配分を実際に記録してみると分かると思うが、肝心要の思考を膨らませるための時間は実はとても少なく、レポート作成(10ページ以上のきれいなパワーポイント形式にまとめる)にかけている時間が異常に長い。
したがって、本格的な外部向けのレポートを書くならともかく、社内で業務を推進するためのものであれば、全体像が分かるような表(むしろ本のコピーそのままでもよい)、討論すべき点の箇条書きと自分なりの考察を2~3日の短納期で2~3枚にまとめて、未完成で良いから多くの人の前にさらして意見交換をし、考察を深めた上で実行計画を練る……といった仕事の進め方をするほうがよほど効果的である。
このような段階を経てレポートの精度を上げ、チームのコンセンサスビルディングにも貢献し、何度も発表する中で自分の学習も進む。そうした中で新しいアイデアによって内容も改善され、実行に向けて関係者の関与を獲得し、その結果、会社にとっても良い結果(売り上げや業務改善)に近づくのである。
言うまでもなく、社内向けのレポートでは、きれいな書式にまとめられていることが重要なのではない。皆からのフィードバックをもらい、内容的にレベルアップし、実際の業務に取りかかれる状況を2週間後に作ることができれば、2週間後に「コピペ」のレポートを出してそれがスタート地点にさえならない場合より、よほど生産性が高い。
紙芝居風パワポは要らない!
重要なのはアクションである
昭和の終わりごろ、欧米系のコンサルティング会社が、ファクトとデータをもとに正しく考えるという素晴らしい仕事の習慣を持ち込んだのだが、一方で副作用ももたらした。1ページ1メッセージで資料を作ることが「クール」であり、そういうことができる人が優秀な人だという間違った認識を定着させてしまったのである。彼らとて最終納品物としてのレポートがそうであるだけで、中間地点でそのようなものを常に作成しているわけではないのだが、残念なことにしっかりした調査をもとにアクションに直結する短いレポートを書くのではなく、見栄えがよく分厚いパワーポイントのアウトプットを上手に作れることが賢く正しいことのように履き違えられてしまったのである。
事業会社においては、上司が目的や制約条件などをあらかじめ提示し、部下とともに工程を検討し、できるだけ短納期で、そして未完成で良いのでまずは第一弾のアプトプットを行うこと。そしてそれを皆で考えることに時間を取り、さらにレポートを改善して、同時に参加者は遂行に向けて地ならしを進めるといったアクション前提の仕事習慣に変えるべきである。
パワーポイントの形式にきれいにまとまった紙芝居もどきのレポートを作っても、会社は1円ももうからないのだ。本来、仕事の与え方(もらい方)、納期の設定の仕方、工程の進め方、間接部門の業務改善などは、ここで述べたようにまだいくらでも自社内で解決できる余地がある。
(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)