10年後に活躍できる人間になるため「逆算思考」で働く

―― そのように自分で仕事を覚えた岩瀬さんが、35歳で『入社1年目の教科書』を書く必要性を感じたのはなぜですか。

岩瀬 出口治明さんとライフネット生命保険を立ち上げて、はじめて新卒の新入社員を迎え入れることになったとき、新入社員に読ませたい仕事の教科書的な本を探したのですが、良い本がなかったんですね。
(編集部注/出口治明氏は創業時の社長で、岩瀬大輔氏は副社長。2人でライフネット生命保険を創業した)

挨拶の仕方、名刺の渡し方などを教える“社会人のマナー本”は当時からたくさん出版されていました。それらも役に立つとは思いますが、「5年後、10年後に活躍できる人間になるために、入社1年目に何をしたらいいのか?」という逆算思考で仕事の基本を教えてくれる本がなかったのです。社会人はスタートが大切ですし、「いち早く成長するために何をすればいいのか知りたい」という若い人たちの声もありましたので、「それなら自分で書いてしまおう」と思ってつくったのがこの本です。

この前、昔のファイルを整理していたら、この本に書いた50項目のルールのうち、20項目くらいは27歳の頃までにメモしていました。この本を書いたのは35歳ですが、内容のほとんどは20代で自分なりに整理できていたのだと思います。

―― 仕事の3つの原則、「頼まれたことは、必ずやりきる」「50点で構わないから早く出せ」「つまらない仕事はない」は、仕事を覚えたての人ほど早く身につけたほうがいい仕事の本質だと思いました。

岩瀬 この3原則は、最初に決めていたわけではないんです。担当編集者の和田さんと話しながら、今まで自分がやってきたことを50個くらい伝えたら、整理して特に重要な3つのポイントを抽出しました。「仕事で大事なことって何?」と聞かれたとき、僕の中ではたくさんあり過ぎて選べなかったのですが、あえて言うならこの3つだなと。今でもそれは変わっていません。

なぜならこの3原則は、とても普遍性が高くて汎用性があるからです。頼まれた仕事は、失敗をおそれず、まずは自分なりにやり切らなければいけません。そして、50点でもいいから早く出して、先にお話ししたとおり、上司のフィードバックを受けながら進めていったほうがいい。コピー取りのような雑用仕事も、「何のために」を知れば、自分なりの工夫ができるかもしれない。こんなふうに考えると、つまらない仕事は1つもないのです。

仕事は総力戦です。自分の力だけでやるのではなく、みんなで力を合わせることが大事ですから、どんな仕事が回ってきてもこの3原則を守ることを覚えていてほしいのです。それが結果的に、仕事を早く覚えることにつながり、自分の成長につながりますから。