(1)外国投資家自ら又はその密接関係者が役員に就任しないこと
 (2)重要事業の譲渡・廃止を株主総会に自ら提案しないこと
 (3)国の安全等に係る非公開の技術情報にアクセスしないこと

 事前審査が不要となるポートフォリオ投資では、上記の3基準が順守されなければならない。ちなみに、楽天モバイルが営む通信事業は、国の安全等に係る事業とされている。

 財務省は、楽天が提出した事後報告を精査し、資本業務提携に該当すると判断したならば、措置命令を出すべきである。

楽天と日本郵政が
資本業務提携

 テンセントによる楽天への出資について、本論に入る前に、M&Aの一形態である、資本業務提携について説明したい。

 資本業務提携とは文字通り、「業務提携」と「資本提携」をセットにして行うものだ。

 業務提携とは、2社以上の独立した企業が、支配権の獲得を意図せず、相手方の技術やノウハウを利用することにより、シナジー効果を生み出し、競争優位を強化するものだ。

 一方、資本提携とは、片方の当事者企業が、相手方企業の株式を取得し、議決権を得ることだ。資本提携の中には、両当事者が、お互いの株式をそれぞれ取得し、議決権を相互に持ち合うこともある。資本提携を行うことで、業務提携よりも強固な関係性を構築することになる。

 楽天はテンセントからの出資受け入れを発表した同日、日本郵政株式会社、日本郵便株式会社との資本業務提携も発表している。業務提携では、物流、モバイル、DXなどさまざまな領域での連携を強化することを目的として業務提携合意書を締結したと発表した。