「現状維持バイアス」がはずれる「インパクト×回数」
転職はインパクトの強い体験だ。インパクトのある体験をすることで、思考は一気に変わる。つまり「現状維持バイアス」がはずれるということだ。
「現状維持バイアス」とは、現状を現状のまま維持しようとする無意識下における心理欲求のこと。理屈ではなく、いままでのやり方は変えたくないというバイアスである。まったく経験のない新入社員でないかぎり、誰でもこのバイアスがかかっている。
では、「現状維持バイアス」を取り払うにはどうしたらよいのか。
転がり続けるボーリングのボールがあると想像してみてほしい。
このボールを止めたり、曲げたり、逆回転させたりするためには、強いインパクトを与えるか、弱いインパクトを何度も与えるか、だ。
つまり、過去の体験によってできあがった思考や習慣を変化させるためには、「インパクト×回数」が必要だ。強いインパクトをかけるか、小さなインパクトを繰り返すか、である。
しかし、転職というのは現実的な選択ではない。
転職先が必ずしも「達成があたりまえ」になっているかどうかも定かではないのだから。
そこで私は、相談にきたこの営業マンだけにインパクトを与えたのではなく、この建設設備の会社にて、組織をまるごと「あたりまえ化」していった。
前述のとおり、思考や習慣を変化させるには「インパクト×回数」だ。
インパクトの強い転職をせずにやるには、同じ組織に残りながら思考を変革させるわけだから、当然のことながら「回数」が大切になってくる。
どのような「回数」が求められるかは、本コラムを通しておいおい説明していく。
ここでのまとめは、「あたりまえ化」は誰にでもできるのだが、多くの場合は「回数」が必要だということである。
「てっとり早くうまくいく状態」をつくる「逆算思考」
「絶対達成」というフレーズを聞くと、多くの人はなにやら大変な努力を求められる気がするだろう。
しかし、そんなことはない。
「発想の転換」を図るだけで、目標を「絶対達成」できるようになる。
発想の転換とはおもしろいもので、これまで「AだからB」と思っていたことを、AとBを逆転させたとたん、突然腹に落ちることがあるからだ。
たとえば、
◆「部下が仕事を覚えないから、仕事を任せられない」
→「仕事を任せるから、部下は仕事を覚える」
◆「役に立つ本がないから、本を読まない」
→「本を読むから、役に立つ本との出合いがある」
◆「疲れているから、運動できない」
→「運動をするから、疲れない体が手に入る」
などがよい例だ。
こういった発想を「逆算思考」と私は呼んでいる。
思考を「あたりまえ化」すると、「時間が未来から流れてくる」。つまり、目標達成から逆算して期限までにいま何をすべきかが明確になるので、時間をコントロールできるようになるのだ。
それと同じで、「逆算思考」で物事をとらえると、逆から考える習慣が身につく。
◆「モチベーションが上がらないから仕事に打ち込めない」
→ 「仕事に打ち込むからこそ、モチベーションがアップする」
というのも同じことと言える。