しかし、記者からの質問に対し「誰かが台湾を喜ばせたくなかったのではないか」と語り、ワクチンを確保する計画が「政治的圧力」により最終段階で頓挫した可能性を吐露した。

 翌日18日の中央感染症指揮センターの会見でも、BNT関連のワクチン契約の問題に質問が集中した。

 その主なやり取りは、下記の通りだ。

 Q:BNTの代理店である中国の上海復星医薬公司と交渉する準備はあるか
 A:BNTと継続して交渉している。上海側とは接触していない

 Q:台湾の半導体を使ったワクチンとの交換交渉はしているのか
 A:ワクチンと半導体の交渉は、別々のものである

 Q:中国製ワクチンの輸入を考えているか
 A:中国製ワクチンは技術的なデータ不足などの理由で、今のところ使用の可能性はない

 その後、BNTはロイター通信社の取材に対してメールで回答し、「世界のパンデミックを終わらせるためにも、台湾へのワクチン供給計画は継続している」と声明を出している。

 中国からの明確な妨害の存在を台湾側は断定していないが、台湾は2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)禍で、「香港の大学からSARSウイルス株の供与を受けるはずだったが、中国が妨害して直前で立ち消えになった」(陳建仁前副総統の昨年のインタビューでの発言)という、あのあからさまな妨害を思い出したに違いない。台湾にとっては、感染症対策もワクチンの確保も臨戦態勢で臨まなければならないのである。