早くから頭角を現す人は、才気煥発で課題解決力があり、良いレポートや提案が書ける。また、プレゼンテーションでも説得力をもって分かりやすく表現する力があり、質問の想定力があるから質疑応答もこなせる。印象操作にもたけている。

 簡単に言えば、誰が見ても優秀で将来性があるように見える。こういう人たちを早めにピックアップし、さらには組織のリーダーとしての人心掌握力を鍛えるべく、それ相応のポジションにつける。その上で、状況に合わせてタイミング良く思い切った判断と行動ができる可能性のある人かどうかをチェックしていくのである。

 しかしながら、このやり方だけに頼ると必ず取りこぼす人が出てきてしまう。それが、「遅咲きさん」だ。

 典型的にはこんな感じの人である。

 若い時分は、特に頭が切れる感じではない。下手をするとボーっとして見えるかもしれない。仲間内でもすごいやつという評判はない。成績もまあまあ――。ところが、はじめて管理者になった頃から少しずつ成果を出し始める。メンバーの適性を見極め、モチベーションを高め、達成すべきゴールに向けて上手にロードマップを描いて実行し、PDCAを組織的に回して成功させる。しかしながら、この段階では視野が広いわけでも将来のビジョンを描けるわけでもない。会社から見ると、せいぜい優秀な実行部隊の隊長くらいの認識だろう。

 それでも、ポジションが上がるにつれ、どんどん視界が広がり、時間軸も長期にわたって考えられるようになる。持ち前の人心掌握力もあって、押しも押されもせぬ幹部候補になる。立場(ポスト)が人を育てるといわれるが、自分の立場として求められていることを実現したいという強い責任感があり、周囲の協力を取り付ける能力も高いため、優秀な他の人の能力を十分に使えるのだ。そして機会によって磨かれ、周りからも学んでどんどん成長していくのである。

管理職減や課題の難化で
遅咲きさんは不利に

 ところが、最近とみに、このような遅咲きさんを登用することが難しくなりつつある。なぜか。

 第一には、管理職になれる人が限られてきているせいである。前述のように、遅咲きさんはチームメンバーとしては「普通」である。管理職になって初めて芽が出始めるのだが、最初の関門で落とされたり、遅れたりすることが想定される。期待度が低いので、有望なポジションに配属されない。才能が開花せず、会社から注目されずにキャリアを終えてしまう可能性がある。その点、過去は「普通」にしていれば誰でも中間管理職くらいにはなれたから、このような取りこぼしは少なかった。