そして、これまで現場で新型コロナ患者に対応してきた公立・民間病院の医師・看護師も可能な限り野戦病院に派遣する。引き続き患者の治療にあたるとともに、自衛隊中央病院の医師・看護師らと、新型コロナ治療の経験を、感染症を専門外とする医官・看護官に研修する役割も担う。

 自衛隊の医官・看護官はいわば災害地での「救命救急医療」の専門家であり、新型コロナ治療の研修期間は、一般病院の医師・看護師が研修するよりも短期間で済むだろう。「即戦力」となり得る存在だ。

 このように、設備、人材を確保したら、「野戦病院」に重症者・中症者を移送する。一方、軽症者は、基本的に自宅診療に切り替える。その代わり、軽症者が中症化、重症化した際には、野戦病院への移送を「災害活動」として自衛隊が直接担うことにする。軽症者の情報を自衛隊に集約しておき、容体が悪化したら即、対応して野戦病院に運ぶこということだ。

現在の「分科会」への評価は、0点ではないか

 また、政府にあらためて提案したいことがある。それは、政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の、委員の入れ替えである。あるいは、分科会を解散し、新しい専門家による会議体を設置したほうがいいかもしれない。

 繰り返すが、新型コロナ対策は、「感染拡大を防ぐ対策」「ワクチン開発・接種」「医療体制の確立」の3つの対策で構成されるべきである。しかし、分科会の委員のうち、医師、医学者のほとんどが感染症の専門家だったために、「感染拡大を防ぐ対策」ばかり検討され、医療体制の問題はほとんど議論されなかった。

 その結果、2度目、3度目の「緊急事態宣言」の発令は、医療崩壊の危機によって起こったにもかかわらず、有効な対策を打ち出すことができないままだ(第270回)

 また、ワクチンの確保については、「専門家」が、従来の常識を超えて驚異的なスピードで進むワクチン開発の状況をつかめていなかったために、首相官邸と製薬会社との交渉が遅れた(第271回)。

後手に回るコロナ対策、最後の切り札は自衛隊の「野戦病院」設置だ本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されています。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 そもそも、「感染拡大を防ぐ対策」についても、国民にひたすら自粛を求めてきたにもかかわらず、十分な結果が伴っていない。国民はいつまで我慢し続ければいいのか、まったく先が見えない状態にストレスが極限に達している。

 以上を考えると、現在の「分科会」は、0点と評価してもおかしくないひどいパフォーマンスだ。委員の総入れ替えは当然ではないか。

 何度でも強調するが、新興感染症パンデミックで医療崩壊を起こさない医療体制の確立は、感染症の専門家だけでなく、医学界全体で調整すべきである。また、全国民へのワクチン接種も、医学界全体で考える問題だ。

 そして、最も重要なことは、今回の自衛隊・野戦病院の設置という提案のように、新興感染症のパンデミックは、国家存亡に関わる安全保障問題と考えるべきなのだ(第49回)。

 これは、現在の状況への対応のみならず、将来、コロナよりもはるかに強毒性のウイルスのパンデミックに襲われるリスクを想定した、「CDC(米国疾病予防管理センター)」の日本版組織設立のベースとなるものと考える。ゆえに、現在の状況に右往左往するのではなく、政府が腰を据えて取り組むべきことである。