日本企業として過去最大の当期純利益を計上したソフトバンクグループ。投資事業の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」で、投資先企業の新規株式公開(IPO)が相次ぎ、前年の過去最悪の巨額赤字から一転して復活した。「金の卵の製造業」を標榜する孫正義会長兼社長は、今期も一段のIPOが見込めると表明するが、快進撃は続くのか。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
前年上回る上場件数へ
孫社長が会見で表明
「ビジョン・ファンドで、今年は昨年を上回る上場件数を見込んでいる。すでに具体的に社名が挙げられる何社かが上場準備に入っている」
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は5月12日に発表した2021年3月期の連結決算発表の記者会見で、投資事業の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の運営に強気の見通しを示した。
同日発表した前期の連結当期純利益は約5兆円。前年の巨額赤字から一転、日本企業として国内最大の利益を記録した。だが、孫社長にとって「利益」は重要ではない。
すでにSBGの事業は投資会社にシフトしており、利益の大半は過去に投資した会社の含み益だ。「今回は『たまたま』が重なって一時的な利益が膨らんだだけ」(孫社長)と一蹴してみせる。孫社長が標榜しているのは、「金の卵の製造業」なるビジネスモデルだ。いわば従来の投資事業の“進化形”で、世界の将来性あるスタートアップに投資し、継続的に利益を出して、再投資する。
それを実現するには、投資先のユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)のIPO(新規株式公開)を「量産」し続けなければならない。そんな夢のようなモデルは機能するのか。
実は、孫社長の自信には明確な根拠がある。