『週刊ダイヤモンド』5月29日号の第1特集は「損しない保険選び」です。新型コロナウイルスのまん延で保険に対する関心が高まっていますが、保険商品は複雑なため簡単に選べるものではありません。そこで、保険プロ24人に協力を仰ぎ、10分野のジャンルでランキング化しました。また、保険業界にはさまざまな不祥事や業界内の確執が噴出しました。もう一つの特集テーマは「保険の裏 営業の闇」。スクープ記事も満載です。(ダイヤモンド編集部 藤田章夫)
がんと診断されれば最大600万円
オリックス生命の狙いと仕組み

2021年3月、オリックス生命保険が発表した新商品に、保険のプロたちの注目が集まった。その商品とは「定期型がん保険Wish(ウィッシュ)」。いったい、なぜプロたちは注目したのだろうか。
ポイントは大きく二つ。まず、がんになれば、最大で600万円の一時金が受け取れるという点だ。
医療技術の進展により、がんの早期発見が容易になってきた。つまり、保険会社からすれば、給付金を支払う可能性が高くなるわけだ。故に、保険会社はがんに罹患すれば支払う診断一時金に対して、慎重にならざるを得ない。
かつて、がん診断一時金を3000万円も支払う生命保険があったが、「診断書の偽造が横行した」とのうわさがまん延したほどだ。
一方で、消費者からすれば、がんに罹患した時点で多額のお金を受け取れるのはありがたい。がんは回復するまでに時間がかかるのに加え、しばらく仕事を休むケースも多く、お金が足りなくなってしまうことが少なくないからだ。
そうした中で、どうやってオリックスは、最大600万円もの一時金を支払う保険を開発できたのか。それが、二つ目のポイントで、定期タイプであることだ。
定期タイプとは、保険期間が10年などのように期間が区切られている保険のことだ。定期タイプに対して終身タイプがあるが、こちらは一生涯保障が続く保険のことである。年齢が高くなれば病気に掛かるリスクが高まることから、終身タイプは保険料が高くなるというのが特徴だ。
つまり、ウィッシュの場合は、保険期間をがんに罹る確率が低い年齢層に限ることで、多額の一時金を支払えるようにしているわけだ。実際、最大600万円を受け取れるプランに加入できるのは、40歳までとなっている。
もっとも確率が低いとはいえ、若くてもがんにかからないわけではない。むしろ、働き盛りにがんになることの方が、家族や家計に与える影響は大きい。そのリスクに備えるために、こういった商品設計になっているというわけだ。
この事例から分かるように、保険を選ぶ鉄則は、自分に万が一のことが起こった場合、どういうリスクがあるのかを明確にし、貯蓄などの備えで足りない分を保険で備えるというものだ。
ましてや、日本は国民皆保険であるため、公的な健康保険制度が充実しているのに加え、会社員ならば、健康保険組合による上乗せ保障があったりもする。公的保障をきちんと理解した上で、足りないリスクに備えるという視点で保険選びを行ってもらいたい。