理由は「知事の言うことを聞かないから」
グローバルダイニングで見えた知事の恣意性

 繰り返しますが、私も飲食店のみなさんにはなるべく要請を守っていただきたいとは思います。しかし、それができない実情があるのです。都が決めたこの理不尽なルールは、むしろ、重点措置の期間に時短営業をしなかった(できなかった)店舗を「協力金が受け取れないなら、酒類を提供するしかない」との心理に駆り立てた可能性さえあると思います。

 ですので私は当時、都の関係部局に猛烈に抗議し制度変更を迫りましたが、担当幹部は「そもそも知事のお願いを聞いていない店だから」との理由で理不尽な条件を擁護し、議論になりませんでした。

 そこで私は、金額が少なくてもいいので、25日以降に自粛や休業に応じた店舗にも協力金を出すようお願いしましたが、これも拒まれたのでした。

 小池知事の“コロナ対策”、とりわけ協力金や時短・休業要請に関するものは一事が万事、この調子であり、柔軟性のなさが際立っています。そればかりか、飲食大手で時短営業に応じなかったグローバルダイニング社への時短営業命令のように、小池知事自身の恣意性さえ疑われます。

 同様にそれらが顕著になったのは、少し前に話題になった映画館への対応です。

 5月12日以降の緊急事態宣言の延長に伴い、国は映画館について、休業要請から、午後9時までの時短営業に緩和しましたが、都は独自に休業要請を維持しました。小池知事が実質的に率いる都議会会派・都民ファーストの会の入江のぶこ総務会長の「ひとりの映画を愛する者として残念です。私個人で言えば、映画館に見に行きたいですしね」とのコメントが「スポーツ報知」の5月16日付のオンライン記事に載っていますが、そういう問題ではありません。

 都の判断に対し、シネマコンプレックスの経営者らが説明を求めても、都側は「人流を抑制するための総合的な判断」の一点張りで、科学的、合理的な説明がなされなかったと聞いています。なお、この件を取り仕切っているのは多羅尾光睦副知事です。

 ちなみに昨年来、映画館では館内の飲食を制限して営業しているところが増えています。さらに、昨年10月に公開され記録的なヒットとなった「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」ですが、全国の映画館で大行列ができました。それでも、映画館ではクラスターは発生していません

 そもそも映画館は興行場法という法律により、換気や照明、清潔さの維持が義務付けられているのです。国もこうした点を踏まえて映画館の営業を緩和したのですが、都は休業要請を続けました。なぜ、こんなことが起こったのでしょうか?

 私が接した都庁内部から漏れ伝わる情報によると、前述の飲食店への協力金と同じで「柔軟に対応できない小池都政」に尽きます。