長男の鈴木俊宏社長は就任(15年6月)から6年たち経験も十分。俊宏体制を支えていく人材も、資本提携先のトヨタグループから初めて受け入れた。

 トヨタでインド法人社長を経験し、直近では日野の商業CASE領域長だった石井直己氏が、6月の株主総会後に専務・社長補佐兼経営企画室長に就任するほか、デンソー出身の山下幸宏氏も同じく株主総会後に取締役専務に就任し、スズキの技術部門を率いることになる。

「外部からの人材は大きな刺激にもなり、今後のスズキの生き残りに向けて重要なことだ」(鈴木修会長)。トヨタグループとの提携深化は、人材面からの活用にもつなげる鈴木修流の深慮遠謀だ。

 ちなみに鈴木俊宏社長は、大学卒業後、スズキ入りする前にデンソーに入社し”修行”を積んでいる。修会長いわく「デンソーの有馬(浩二)社長と俊宏社長は机を並べた仲」であり、後継の人脈も十分というわけだ。

人気絶大の修会長
現場主義、修語録で人望を集める

 1930年生まれの鈴木修会長。すでに御年91歳になるが、元気でかくしゃくとしている。話しぶりはスローになったが、銀行マン出身らしく相変わらず数字に強く、記憶力も確かだ。

 海外進出や提携だけでなく、国内市場においても数多くのヒット商品を手掛け、市場を切り開いてきた。

 社長就任直後の79年に発表・発売した「アルト」は、当時、物品税のかからない軽ボンネットバンを乗用車的に使えて、価格は全国統一の47万円。スズキの経営を立て直す推進役になると同時に当時、ジリ貧傾向にあった軽自動車復活の道を作った。また、社長就任前には、軽自動車の小規模メーカーだったホープ自動車から製造権を買い取って「ジムニー」を世に出した。さらに93年に発売した「ワゴンR」は、現在の軽市場の主流となるハイトワゴンというカテゴリーを創り出した。GMとの提携では軽をベースに「カルタス」「スイフト」などの小型車ヒット商品を生み出していった。

 鈴木修会長は徹底した現場主義・現実主義でも知られる。スズキ入りして社長に就任するまでの20年間で培われた現場へのこだわりは、トップになってからも失われず、精力的な工場回り、全国販売店の声の吸い上げを欠かさなかった。