時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売。好評につき発売6日で大増刷が決定! 日本経済新聞の書評欄(3月27日付)でも紹介され大反響! 本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。好評連載のバックナンバーこちらからどうぞ。

米国発の多くの経営理論や新しいコンセプトは日本企業においてすぐ実践で使えるものではないPhpto: Adobe Stock

メジャーな経営理論のほとんどは、
組織運営の文化が異なる米国発

 新しい経営理論に興味を示される経営者にお目にかかることがあります。

 あるレベル以上の経験を積んだ実践的なコンサルタントのように、経営理論を実践で試す場を経験してきた方であれば、現実の使い勝手のよしあし、難しさを経験から肌で理解していますが、経営者にはそういう方は多くはありません。

 理論とは「再現性のある法則」です。

 どのような理論もそれを現実に適用するためには、実践を通じた磨き上げが必要になります。そのプロセスを経ずに、いきなり実践に使おうとすれば、読み違えを含めて予想していなかったことが起きるのは当たり前です。

 繰り返しますが、はじめに理解しておかねばならないのが、我々が知るメジャーな経営理論のほとんどは組織運営の文化が異なる米国発であるという事実です。

 例外となる最近の例では、パリのインシアード(ビジネススクール)のW・チャン・キム教授とレネ・モボルニュ教授の『ブルー・オーシャン戦略』が欧州発のメジャーな理論になったことくらいでしょう。

 現実のビジネスの場は、言うなれば数学が扱う「論理的に閉じた空間」とは異なり、前提や適用のために必要な条件を押さえて、さらには実践段階での調整が必要になります。

 ところが発表される理論では、たとえば、地球には空気が存在すること、日本人は日本語が理解できることなど、我々が日々過ごす現実世界での当たり前のことまでは、必ずしも丁寧に解説していません。