そしてその内訳を見てみると、高齢者が10年間で6割増加。その一方で、2020年の出生数は約1200万人と、前年比で2割近く減少し、中国国内で少子高齢化が加速していることが明らかとなった。

 特に、先進都市である北京や上海では、新生児の減少が著しい。北京の場合は、戸籍人口における新生児の数が2020年は10万人であると発表されている。この10年間で最も少なく、前年から一気に24.3%も減った。また、上海では、ある数値がネット上で拡散され、人々に衝撃を与えた。それは、上海で元日に生まれた新生児の数の10年ごとの推移である。2000年には1148人、2010年は380人、2020年は156人となっているという。1日の数とはいえ、20年間で約86%も減少した計算となる。

 中国がかつて人口抑制政策として実施していた「一人っ子政策」は、2015年に終止符が打たれた。その翌年には、「二人っ子政策」を開始したにもかかわらず、少子高齢化は加速している。背景には、近年晩婚化が進み、結婚したくないと考える若者が増えている中で婚姻率が下がっていることと、離婚率が上昇していることがある。

 また、2人目まで産むことが緩和されても、産みたくないと考えている夫婦が多いようだ。今回の国勢調査では、1人の女性の生涯の出生率は1.3と発表されており、日本の1.36(2019年)を下回っている。

 出生人口の大幅な減少は、中国の社会の変化をそのまま物語っているのではないかと考える。

「結婚したくない」「結婚しても子どもをつくりたくない」。また、「結婚したくても相手が見つからない」「子どもが欲しい。でも、育てていく財力と気力がない」など、中国の若者は今さまざまな思いを抱えている。

子育て世代が直面する「三つの壁」
家計を圧迫するローン、教育費

 こうした悩みの背景には、不動産価格、教育費、厳しい社会競争という「三つの壁」があるといわれている。

 中国では、急速な経済の発展とともに、約20年の間に不動産価格が数十倍にまで高騰した。大都会の場合、街の中心にある老巧中古のマンションでも1億円はくだらない。住宅ローンの返済、あるいは不動産価格上昇につられて上がった家賃の支払いは、若夫婦の家計にとって大きな負担となる。

 そして、子どもが生まれたら、中国の厳しい競争社会が待ち構えている。親たちは「スタートラインで負けさせる訳にはいかない」という一心で英才教育に力を注ぎ、学校以外に家庭教師を付けたり、水泳、楽器、バレエなど複数の習い事に通わせたりすることで、教育費が家計を圧迫していく。