新たな生活にシフトしていくための
資金力を備えておくことも重要

 平均的な収入の人からみれば、Aさんの悩みはぜいたくに思えるかもしれません。家政婦さんを頼むことをやめれば赤字は解消し、子どもの習い事や塾もやめて進路を変更すれば、収支は一気に好転します。車を売る、転居するなどの荒療治もできないことはありません。

 しかし「子どもには、妻が生きていたときと変わらない生活をさせてやりたい」というのが、Aさんの希望です。残された家族3人の喪失感はとても大きいことが感じられました。

 とはいえ、このまま沈んでいくわけにはいきません。

「これまでと生活を変えるのは、そう簡単ではありません。でも、少しずつでいいので現状に合わせて変えていくことを考えてみませんか。まずは家政婦さんへの支払いを減らせるよう、お子さんと一緒に家事をすることから始めてはいかがでしょう」

 私がアドバイスしたのは、それだけでした。

「プロでも妙案はありませんよね?」と聞かれ、「ありません」と答えました。Aさんは、自分でキャッシュフロー表を作成した時点で、どうすればいいのか、分かったはずです。それでも、誰かに聞いてほしかったのでしょう。もう家計のやりくりを相談できる妻はいないのですから。

 万一のときに、残された家族が少しずつ慣れて新しい生活になじむまで、お金の力を借りられるようにしておきたい、そう考えるなら、専業主婦の妻であっても、掛け捨ての保険で死亡保障を最低限確保するのは一つの方法です。また、両親が近くに住んでいる、子育てを通した人間関係があるなど、何でもないようなことが、いざというときには助けになります。

 自分の生活が何によって成り立っているのか、改めて考えてみてはいかがでしょうか。