予防接種の副反応による健康被害は、非常にまれではあるものの、完全になくすことができないのが実情だ。とはいえ、その数は、感染症にかかって重症になったり、命を落としたりする人に比べるとケタ違いに少ないのだ。ワクチンを打つことのメリットが副反応のリスクを大きく上回ると判断されているため、世界の国々は感染症対策としてワクチンを導入している。

 ワクチン政策が、最大多数の最大幸福を目指すものである以上、その陰には、わずかでも健康被害の対象となる人が出てしまう。だが、そのジレンマの対処策は用意されている。それが、予防接種健康被害救済制度だ。

 統計上はわずかな数字でも、当事者になれば、そのリスクを100%受け止めなければならず、補償があるから健康被害が出てもいいというものではない。だが、万一の場合には、こうした制度があることも知っておけば、ワクチンを打つ際の一つの安心材料にはなるのではないだろうか。万一、COVID-19のワクチンを接種したことで重篤な健康被害が出た場合は、市町村の窓口に相談してみよう。

 前述したように、COVID-19のワクチン接種を含む予防接種は努力義務で、受けるかどうかは個人の判断に任されている。それもあってか、ちまたには、ワクチンによる健康被害にフォーカスを当てた言説があふれており、ワクチンを打つことに強い拒否感を持っている人もいるのも事実だ。

 だが、今の閉塞した環境を打開するためには、より多くの人が予防接種を受けることで集団免疫を獲得し、人が自由に動ける環境を、できるだけ早く取り戻す必要があるだろう。COVID-19のワクチンは、そのゲームチェンジャーになることが期待されている。そして、万一の場合の救済策も整備されているのだ。

 65歳以上の高齢者への接種が一段落すれば、64歳以下の人にも接種の順番が回ってくる。ワクチンを受けることのリスクとベネフィット、そして受けないことのリスクとベネフィットは何か。そして万一の救済制度にも目を配ったうえで、自分はどうするのかを冷静に考え、決定してほしい。