心不全の予防ポイント40、50代から心臓ケアをPhoto:PIXTA

 先月10日、循環器病に関わる新たな団体として「日本循環器協会」が発足した。近い将来の「心不全パンデミック」に備え、予防啓発に力を入れる。

 心不全は高齢者の病気と思われがちだが、近年は原因疾患の高血圧症や2型糖尿病が増加し、40代、50代でも増えている。

 悪性腫瘍(がん)が短期集中決戦なのに対し、心不全は階段を一歩一歩下りるように長い時間をかけて心機能が悪化。気がつくと、息苦しさや足のむくみなど特有の症状に悩まされるようになる。

 心不全のステージ(病期)は、A~Dに分類される。ステージAは、高血圧症など基礎疾患があり、心臓に異常が生じる可能性が高い状態。ステージBは、心臓に異常が生じているものの、まだ息苦しさなどの自覚症状はない「無症候性」の段階だ。さらに進行すると、心不全ステージに突入する。

 ステージCでは、心臓に異常があり、心不全特有のむくみや息苦しさが生じる。激しい呼吸困難、強い胸の痛み、チアノーゼ(酸素不足で唇や爪先が青紫に変色する)などを伴う「急性心不全」で救急搬送されることもあるが、この段階では治療に反応して、症状を和らげることができる。

 しかし、一旦、心不全に陥った心臓は元には戻らない。入退院を繰り返すうちにステージDに進行すると、治療手段が尽きて死に至る。心不全の5年生存率は50%。最新のがん統計による全がんの同64.1%より悪いのだ。

 心不全の予防は「発症予防」と「再発予防」の2段階だ。何はともあれ、心臓に負担をかける生活習慣病にならないよう、健康的な運動・食習慣を続けること。

 すでに基礎疾患があるステージA/Bの心不全予備群では、基礎疾患の治療が最優先だ。結局それが「心臓ケア」につながる。心機能に多少の異常はあっても心不全まで悪化させないことが肝心。

 心不全のステージCは正念場だ。再発と再入院を防ぐために処方された薬を忘れずに飲み、禁煙、減塩の徹底と栄養バランスの改善に取り組むこと。また、医師と相談しながら適度な運動を取り入れ、体力と身体機能の維持を図りたい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)