追加金融緩和は市場の期待に応えられず
デフレ脱却ができないのは日銀のせい?
10月30日、日本銀行は金融政策決定会合で、金融資産買入れ基金を11兆円増額することを柱とした追加金融緩和策を決定した。今回の追加緩和策の決定に対し、金融市場は初動動作として株価の下落、円高で反応し、実際の決定が事前の15兆円から20兆円の追加緩和策の期待に達しなかったことを表現した。
今回の日銀の決定会合に関して注目されるのは、政府・日銀の間の政策運営に係る共同文書が公表されたことだ。政府サイドでは、従来からデフレについては日銀の政策対応に起因する部分が大きいとの見方が大勢だった。
有力政治家の中にも、「デフレから脱却できないのは日銀の責任」という趣旨の発言を行なう人もいた。
本当に、わが国経済がデフレから脱却できないのは日銀の責任なのだろうか。確かに経済学では、一般的にデフレは貨幣の現象と定義される。貨幣に関するコントロールは日銀が行なっている以上、デフレという経済現象に関して日銀の機能が重要であることは当然だろう。
しかし、現在のわが国経済の状況を見ると、デフレの本当の原因は、産業界の競走力など経済の基礎体力が低下していることや、それに関連して国内の大きなデフレギャップ=供給が需要を上回る部分が存在していることが重要な原因と考える。
それらを金融政策だけで解決することは、困難と言わざるを得ない。むしろ、政府と日銀、それぞれができることを迅速に実行して、国民の将来に対する不安心理を軽減することの方が重要だろう。
政府がデフレ脱却の責任を日銀に押し付けるだけでは、問題の解決にはならない。政府も政治家も、それを十分に理解することが必要だ。