コーエン氏は検察と司法取引をしてトランプ氏のために違法行為をしたことを認め、選挙資金法違反、脱税、偽証罪などで3年の禁錮刑を受け、すでに服役を終えている。

 マンハッタン地検はニューヨーク州司法当局と協力して、トランプ氏と会社の幹部が税や銀行、金融などに関する州法に違反していないかどうかを綿密に調べている。特に力を入れているのはトランプ氏の脱税疑惑である。

 2020年9月28日付のニューヨークタイムズ紙は、過去18年間におけるトランプ氏の納税に関して調査し、そのうち11年間は連邦所得税を全く納めていなかったこと、また、大統領に当選した2016年と就任1年目の2017年に納めた額はわずか750ドル(8万円強)だったという驚くべき事実を詳細に報じた。

 750ドルというのは、2万ドル(約220万円)の年収しかない低所得者が納める連邦所得税の額に相当する。

 一方でトランプ氏は長い間、内国歳入庁(IRS)の監査を受けているが、この記事によれば、IRSは同氏が2010年に受け取った7290万ドル(約80億1900万円)の還付金が適正だったかどうかについても調査しているという。

 税金問題に詳しい調査報道記者のデビッド・ケイ・ジョンソン氏はこう指摘している。

「トランプ氏がなぜ納税申告書を開示したくなかったのか、理由は明らかです。何年も税金を納めてこなかったからです。ニューヨークタイムズ紙の記事にも多くの証拠資料が載っているように、トランプ氏の行為は合法的な納税回避ではなく、脱税だったのです。トランプ氏にとってこれは新しい話ではなく、これまでにも所得税を巡る不正行為で2件の民事訴訟があり、いずれも書類の偽造があったとの判断で敗訴しています」(「PBSニュースアワー」2020年9月28日)