そもそも、デジタル化法とは?
相続税対策で気をつけるべきことは

 預金者にマイナンバーの届け出が義務化されなければ、マイナンバーと金融機関口座のひも付けは成り立ちにくい。そのため、この義務化については、国会でも何度も議論されている。

 賛成派の意見は、マイナンバー制度の柱とされる「社会保障」「税」「災害対策」の3分野で、個人の特定を確実かつ迅速に行うことが可能になるというものだ。特にこのコロナ禍で給付金支給の遅れが問題となったが、マイナンバーと全預貯金口座がひも付いていれば迅速化でき、不正受給も防げるという。

 しかし、反対派は、国による個人情報の管理は国民監視につながりかねないと懸念する。国が個人の資産状況を把握するのは、民主主義、自由経済の趣旨に反する。個人情報流出への対策も万全ではない。また、コロナ禍の支給遅れは申請が殺到し、行政のシステムがパンクしたためという指摘もある。

 物事には必ず正の側面と負の側面、メリットとデメリットがある。確かに、行政手続きの簡易化・効率化、不正受給の防止は、日常生活の行動として具体的に想像でき、メリットとして実感しやすい。しかし、個人情報やその管理に関しては、ひとたび問題が浮上しないと、その重要性が実感しにくい。

 マイナンバーと預貯金口座のひも付けに関する議論は、納税者として慎重に見守っていくべきだろう。

 では、そもそも、「デジタル改革関連法」はどんなものだろう。具体的には以下の6法から成る。

 1.デジタル社会形成基本法
 2.デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律
 3.デジタル庁設置法
 4.公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律
 5.預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律
 6.地方公共団体情報システムの標準化に関する法律

 相続税という観点から注目したいのは、4番目「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律」と、5番目「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」。これまで語ってきたマイナンバーと口座のひも付けに関する法律だからだ。

 4番目「公的給付の~」は、緊急時の給付金や児童手当などの給付を受け取る口座を、希望者が金融機関窓口やマイナポータルで登録できるものだ。申請手続きの簡素化・給付の迅速化が目的とされる。

 5番目「預貯金者の意思~」は、相続時や災害時に預貯金口座の所在を確認できる仕組みを創設するもの。本人同意の上、一度に複数の預貯金口座への付番が行え、マイナポータルでも登録可能になる。

 もうお気づきのことだろう。マイナンバーと預貯金口座のひも付けは、すでに始まっているのである。一歩ずつ、じわじわと前進しているのである。どちらも「希望者」「本人同意」を前提とはしているが、5番目などは「相続時」と使用目的も明らかだ。

 つまり、金融機関へのマイナンバー届け出が預金者にも義務化されれば、どの口座もひも付いてしまう。銀行、信用金庫、信託銀行、証券しかり。隠し口座、名義預金、贈与税の課税対象となる生前贈与、使途不明の入出金……、国税局や税務署が口座照会すれば一網打尽に把握でき、税務調査につながってしまう。