このような価格急騰を招いた「直接的な要因」は、巷間言われている通り、世界に先駆けていち早くコロナ禍の収束およびワクチン接種が進み経済環境が改善に向かい始めている中国およびアメリカでの木材需要の高まりによるものだ。

 コロナの世界的な感染拡大が始まった2020年初頭からの木材需要の落ち込みが急回復したため、需給のバランスが大きく変わり、“木材の奪い合い”となったことが要因といわれている。しかもその多くを輸入に頼らざるを得ない状況では、この急激な値上げも受け入れるしかない。まさに日本の住宅産業のサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性がコロナ禍での市場の急変によって露呈したことになる。

国土の7割が山林の日本は
木材資源大国でもある

 この世界的な需要と供給の逼迫がウッドショックの直接要因ではあっても、根本的な問題はそこではない。

 実は、日本国内の山林は約2505万ヘクタールと国土の約67%を占めており、1348万ヘクタールが天然林、1020万ヘクタールが人工林、残りが竹林や無立木地(伐採後、まだ再植林していない土地)で、天然林と人工林だけで約76億立方メートルもの木材資源がある計算だ。

 これだけの資源がありながら、輸入木材に頼らざるを得ないのは、日本の林業における深刻な労働力不足がある。当然のことながら、山村での過疎化、高齢化が進んで林業に携わる人材が不足し始めたことで、先述の木材自給率の低下が始まったともいえるため、ウッドショックを解決する方法は労働力不足の解消だとわかっていても実行するのは容易なことではない。

 林野庁の調査によると、1980年に約14.6万人だった林業従事者数は、2015年には約4.5万人と35年で実に7割減という状況になっている。また、林業従事者の高齢化率(65歳以上の割合)は25%で、全産業平均13%の2倍だ。

 国もこの状況に手をこまねいていたわけではなく、2009年には農林省が「森林・林業再生プラン」を策定し、10年をめどに木材自給率を50%まで引き上げるという目標を掲げて事業推進した。