B社社長によれば、もともとそうした作業は粉じん曝露作業のため、防じんマスクは装着していた。だが、どの程度の防じん性能のマスクなのかはわからないという。

 フィルターの交換が可能な防じんマスクだったとの話なので、粒子の捕集効率が少なくとも95%以上のものとみられる。よって、防じんマスクの適切な使用と管理がされていれば作業時の内部被曝はかなり防ぐことができたといえるかもしれない。

 ただ、防じんマスクが十分に機能していたとしても、B社では宇宙服のような防護服は使っておらず、通常のどこにでもある作業着だった。防護服に付着した粉じんを吹き飛ばし、除じんする「エアシャワー装置」もないため、作業を終えた後、防じんマスクを外してから作業着に付着した焼却灰に曝露するといったことも考えられる。

 また放射性物質を扱う施設とは違って、工場の場内を負圧にして、専用の除じん装置による室内空気の管理がされるはずもない。工場内で飛散した焼却灰は換気口や出入口から外部に流出するはずだ。工場内の換気状況にもよるが、場内で舞った焼却灰が一度床に落ちた後で、それを掃き掃除することで再び飛散するといったことが繰り返された可能性もある。あるいは床を水で洗い流すなどしていれば、下水や雨水とともに排水されるかもしれない。

実際の曝露はどのくらいか

 では、実際どのくらいの放射性物質による曝露があったのか。

 厚生労働省電離放射線労働者健康対策室に確認したところ、「調査してみないとわかりません」という。当然だろう。

 その手がかりとなる公表資料は、現状では、この消音器が設置されていた自治体の下水汚泥焼却炉の焼却灰で数千ベクレル単位の放射性セシウムが現在も検出されていること以外ない。

 集じん装置で捕集された焼却灰とすり抜けたもので放射能濃度に違いがあるかどうかは、単純に一定割合が集じん機を通り抜けているとすれば、放射性物質の含有量は焼却灰と同程度かもしれない。あるいは集じん機によって粒子の大きい焼却灰は除去され、粒子の小さいものばかりがすり抜けているのだとすれば、微細な粒子ほど放射性セシウムが吸着されやすい(小さい粒子ほど質量・体積当たりの表面積が大きい)ことから、むしろ含有量は高くなる可能性もある。

 取材でA社を訪れた際、廃棄物の一部が残っているかもしれないというのでB社に案内してもらったところ、まだ廃棄前の部材が残っていた。だが、雨ざらしになっており、一部は雨で流されてしまった後のようだった。

 パンチングメタルの表面に付着する焼却灰をこそぎ取って持ち帰り、2つの試料にわけて分析してもらったところ、放射性セシウムが1キロあたり計134.7~135.6ベクレルだった。

 しかし、1キロあたり数千ベクレル単位という焼却灰の放射性セシウム濃度に比べ、大幅に低い結果だった。これはなぜなのだろうか。