宿題は親子のコミュニケーションツール

坪田 あと、最近意識していることがあるんです。宿題って親御さんが「やらせなきゃ」という観点だから、みんな「宿題やったの?」「もう夏休み3日たったよ」「1日もやってないじゃない!」ってなりがちなんですが、そうじゃなくて、宿題は親子のコミュニケーションツールだと思うんです。

 たとえばうちの3歳の子はアンパンマンの絵本が好きで、ミニミニアンパンマンっていう小さな絵本を「読んで」って持ってくるんですよ。「今からパトロールに行くよ!」っていうページで「今からパトロールに行くよ! ○○ちゃん」っていうと子どもは「うん!」って言ってうれしそうにしているし、絵本に描いていないことも創作して話していると、のってきて「アンパーンチ!」ってしてくれる。これって絵本をツールとした、親子のコミュニケーションですよね。宿題もそうやって楽しめると思うんです。

 親って、子どもが何か悪いことをしたときは10分15分、説教できるんですよ。でも10分15分連続でほめる続けることってできない。語彙が足りないし、僕たち自身もそういう経験を受けていないから。

 だから僕は、「えんぴつ持てるんだ。すごいね!」って高校生にも言ったりするんです。「えんぴつの持ち方きれいじゃない?」っていうと、高校生でも「ありがとうございます」って、ちょっとうれしそうなんですよね。

 その子のいいところとか、個性とかを表現する、コミュニケーションをとるツールとして宿題を考えてみたらどうかなと思います。

てぃ もしそれにプラスするとしたら、宿題を一生懸命やっていたというのを、お母さんが子どもの前でお父さんに「今日ね、宿題を一生懸命やってたんだよ」と報告してくれるのが子どもはいちばんうれしいんですよ。お母さんが直接ほめるのももちろんいいんですけど、第三者に対してもそんな話をしてくれるくらい、ママはちゃんと自分のことをわかってくれている、って思える。そういうのを夕食のときにやると、それもひとつコミュニケーションツールになるんじゃないかなって。

 普通は子どもの悪いことを報告することのほうが多いですよね。「今日またこんなことやったのよ。あなたからも叱ってよ」ってなりがちですけど、ほめるほうがいいんじゃないかな。

坪田 そうですね。あと宿題でありがちなのが、そもそも中身をちゃんとわかっていないし、本人がどれくらいできてどれくらいできていないのかもわかっていないのに「宿題やったの?」って言いがち。これって仕事のことを何もわかっていない人から「ちゃんと仕事してんのか」って言われるのと同じ。けっこうイラッとすると思うんですよね。やらせるのであれば、せめて中身を把握したうえでやっていることを聞くというのが大事ですよね。

てぃ ママたちが言いがちなことに、「ここまでやったら、ママが手伝ってあげる」っていうのがあるんです。これ逆なんですよ。最初の数問一緒にやってあげたほうが絶対続くじゃないですか。ここまでたどりつかないのに、なんでそれを待ってるの?(笑)

坪田 ほんとにそのとおり! むしろ導入を手伝う。「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」って山本五十六(日本の海軍軍人1884~1993年)の言葉とまったく同じで。最初に一緒にやってみせる。なんなら自分がやってみせて、ポイントを伝えて、やってみる?みたいな。最初の導入がすごい重要。