ヤマト運輸が抱えるジレンマ、宅急便とEC向け配送サービスをあえて切り離す理由Photo:123RF

宅配便市場が驚異的な急成長を遂げる中、ここ数年“ジレンマ”を抱えていたヤマト運輸は、宅急便とEC向け配送サービスを「あえて切り離す」という戦略に踏み切った。その狙いとは?(『カーゴニュース』編集長 西村 旦)

“宅配便50億個時代”が到来
ヤマト、佐川、日本郵便の見通しは「強気」

 宅配便市場は2021年度、いよいよ50億個時代に突入する――。 

 30年前に年間10億個だった取扱個数がこの30年で5倍に成長。国民1人当たりに換算すると、年間約50個を利用している計算になる。もはや電気や水道、ガスにも匹敵する生活に不可欠なインフラのひとつだといえるだろう。その重要さはコロナ禍という状況においてさらに高まり、巣ごもり消費によるeコマース(以下、EC)の爆発的な伸びによって、取扱個数はさらに拡大傾向にある。

 2020年度の宅配便の伸びは驚異的ともいえるものだった。国土交通省による業界全体の集計値は未発表だが、全体個数の9割以上を占める大手3社(ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便)の取扱個数は合計で約45億3000万個となり、前年から約5億個の増加となった。ちなみに、2019年度の宅配便全体の取扱個数(トラック扱い)は42億9000万個。つまり2020年度は大手3社のみで、業界全体の昨年実績を大きく上回っていることがわかる。

 各社の実績をひもとくと、ヤマト運輸の取扱個数は20億9600万個となり、伸び率は前年比で16.5%増。個数ベースでは約3億個の増加となり、取扱個数が初めて20億個を超えた。佐川急便は13億4700万個で同7.2%増。個数ベースでは約9600万個の増加。日本郵便は10億9000万個で同11.9%増、1億1600万個の増加となり、こちらは初めて10億個の大台をクリアした。