勘違いその(3)
投資は簡単で誰にでもできる

 そして三つめの勘違い、それは「投資を甘く見てしまうこと」である。退職するまで投資経験の無い人の中にはもともと投資には興味もないし、投資は好きではないという人が多い。「株をやるやつにロクなやつはいない」とか「あんなものは、ばくちだ」と考えているのである。

 もちろん投資には興味もないし、そういうことはやりたくないという人が生涯にわたって投資と関わらないのであれば、それはそれで別にかまわない。問題は、そんな人が退職金をもらって急に「このお金を増やしたい」と欲を出し、まとまった金額で投資をしてしまうことだ。

 投資というのはそんなに簡単なものではない。リスクと向き合う覚悟が必要だし、ある程度勉強することは欠かせない。ところが投資を甘く見てきた人は簡単にもうかるのではないかと勘違いをしてしまう。特にこの10年ほどの間はマーケットが好調だっただけに「投資すればもうかる」という風潮が蔓延(まんえん)しているからだ。

 金融機関もそんなことは百も承知だから、退職者には熱心に投資を進めてくる。退職者というのは金融機関にとっては最高のお客なのである。なぜなら(1)まとまったお金を持っている、(2)その割に投資の知識はない、(3)でも、もうけたいという欲だけはある…とまあこういうことだから、あの手この手を使って投資に誘い込もうとするのは当然だ。一番効率の良いお客なのだから。

 このように、定年退職者が退職金を手にしてそれまでやったことがない投資を始めると失敗する可能性は極めて高い。とはいえ、筆者は投資をやること自体が悪いとは思っていない。ただ経験の度合いとか資金の性格を考えて投資のやり方を少し考えた方がいいのではないかということなのである。